夫婦のいずれかがフリーランスとして働き始めて収入を得ると、会社員であるパートナーが対応する年末調整や、自身の青色申告で「配偶者控除」の対象かどうかを判断するケースが出てきます。

今回は「配偶者はいるけど、はたして控除対象になるのか……?」と悩んでいる方に向けて、自身もパートナーと共にあらゆるケースを経験してきた筆者が解説します。

目次
配偶者控除とは
配偶者控除を理解するための関連キーワード解説

配偶者控除とは

フリーランス×配偶者控除、全ケース網羅解説
(画像=▲出典:たけべともこ/ぱくたそ、『Workship MAGAZINE』より引用)

配偶者控除とは、配偶者および納税者本人の所得の条件に応じて、所得税の控除を認める制度です。まず、配偶者控除を受ける基本ルールとして、下記の3点すべてを満たす必要があります。

  • 民法の規定による配偶者であること
  • 控除を受ける納税者本人と配偶者が生計を一にしていること
  • 配偶者が青色申告者または白色申告者の事業専従者でないこと

これらの条件を少し柔らかい言い方に直せば、婚姻届を出した夫婦が生活費を共有しつつ暮らしていて、なおかつ同じ事業を2人で営んでいるわけでもない状態ということです。

この基本ルールを満たしている場合、これから説明する所得金額の条件をクリアできれば、所得金額が大きいほうの納税者が配偶者控除、または配偶者特別控除のどちらかを受けることができます。

配偶者控除の条件

配偶者控除を受けるためには、以下2つを両方満たす必要があります。

  • 控除を受ける納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下
  • 配偶者の年間の合計所得金額が48万円以下

なお配偶者が被雇用者の場合は、55万円の給与所得控除があることも念頭に置いておきましょう。もしも配偶者の給与収入が103万円以下であれば、給与所得控除の55万円を差し引くと、結果として合計所得金額が48万円以下になります。

つまり、配偶者が給与収入のみを得ている場合、給与収入が103万円以下であれば配偶者控除対象ということです。俗に言われる「103万円の壁」ですね。

これらの条件はすべて、その年の12月31日時点で満たしている必要があります。たとえば、12月30日に離婚をした場合、12月31日の時点では民法の規定による配偶者ではなくなっているため、基本ルールを満たさないので、配偶者控除を受けられないことになります。

配偶者特別控除の条件

配偶者控除の他に、配偶者特別控除というものがあります。これは配偶者控除の条件にはあてはまらないものの、控除されるべき対象のために作られた特別措置です。

配偶者特別控除を受けるためには、以下3点すべてを満たす必要があります。

  • 控除を受ける納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下
  • 配偶者の合計所得金額が48万円を超え、133万円以下
  • 夫婦が互いに配偶者特別控除を適用しあっていないこと

配偶者控除と配偶者特別控除の控除額

配偶者控除と配偶者特別控除は、それぞれ下記の表のように控除額が決定します。

配偶者控除の控除額(令和4年現在)

納税者本人の合計所得金額(単位:円)一般の控除対象配偶者(単位:円)老人控除対象配偶者※(単位:円)
900万円以下38万48万
900万円超950万円以下26万32万
950万円超1,000万円以下13万16万

※12月31日時点で、配偶者の年齢が70歳以上の場合

配偶者特別控除の控除額(令和4年現在)

納税者本人の合計所得金額(単位:円)配偶者の合計所得金額(単位:円)
48万~95万以下95円~100万以下100万~105万以下105万~110万以下110万~115万以下115万~120万以下120万~125万以下125万~130万以下130万~133万以下
900万以下38万36万31万26万21万16万11万6万3万
900万~950万以下26万24万21万18万14万11万8万4万2万
950万~1,000万以下13万12万11万9万7万6万4万2万1万

配偶者控除を理解するための関連キーワード解説

フリーランス×配偶者控除、全ケース網羅解説
(画像=▲出典:ぱくたそ、『Workship MAGAZINE』より引用)

ここまでは配偶者控除の基本ルールを説明しましたが、混乱を招きやすい言葉がいくつか登場しました。より正しく配偶者控除を理解するために、混同されやすい言葉の定義をチェックしておきましょう。

所得と収入の違い

ここまでの説明にもたびたび登場してきた「所得」とは、収入から必要経費を差し引いた金額のことです。

たとえば、配偶者が年間60万円の収入を得て、そのために経費が20万円かかっていれば、経費を差し引いた年間所得は40万円です。つまり、年間所得が48万円以下とみなされ、配偶者控除の対象になります。

扶養控除と配偶者控除の違い

扶養控除と配偶者控除はいずれも家族に関わる控除制度ですが、まったくの別物です。

扶養控除の対象は「16歳以上の6親等内の血族もしくは3親等内の姻族」と定められていますが、配偶者はこのなかに含まれません。

したがって夫婦間の控除について考える際は、扶養控除のことは一度頭から抜いておきましょう。

社会保険扶養と配偶者控除の違い

この他に「社会保険扶養」という制度も存在します。社会保険扶養とは、特定の条件を満たした親族が、社会保険料を自ら支払わず健康保険に加入できる制度です。

この社会保険扶養の対象には配偶者も含まれますが、その判断基準は配偶者控除の基準とは異なります。したがって、配偶者控除対象でなくとも社会保険被扶養者になれることもあります。

混同してしまわないよう、それぞれ条件を確認しましょう。