中南米に分布するハキリアリは、葉っぱを切って巣に持ち帰り、そこに菌類を植えつけて栽培する面白い習性の持ち主です。
ウィスコンシン大学マディソン校はこのほど、ハキリアリの一種「Acromyrmex echinatior」が、防護のための特殊なボディアーマーを身につけていることを発見しました。
これにより、抗菌性や戦闘力が格段にアップしていたようです。
研究は、11月24日付けで『Nature Communications』に掲載されています。
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菌畑を育てるハキリアリ
ハキリアリは菌畑を育てるために役割分担をしています。
からだの大きなアリは巣の外に出て葉っぱを集め、敵と戦い、小さなアリは巣内で菌畑のガーデニングをします。
持ち帰られた大量の葉は一カ所に集められ、アリタケと呼ばれる特殊な菌類を植え付けて栽培し、アリたちのエサとなるのです。
この菌類との不思議な共生関係が注目される一方、大群で暮らすアリにとっては病原菌に感染するリスクの高まりを意味します。
専門家たちは、ハキリアリがいかにして病気を防いでいるか疑問に思っていました。
その答えは、A. echinatiorが手に入れたボディアーマーに隠されているかもしれません。
アーマーの装着は昆虫界初!
研究チームは、A. echinatiorの体表面に見られる「白っぽい粒状皮膜 」を分析し、これが昆虫界で初となる「天然のボディアーマー」であるという結論に達しました。
研究主任のキャメロン・キュリー氏は「バイオミネラル(生体鉱物)のコーティングが発見されたのは、アリと菌類との共生関係を調べていくた最中でした」と話します。
電子顕微鏡などで詳しく分析した結果、バイオコーティングは薄い層状になっており、3〜5マイクロメートルほどの菱面体マグネシウムカルサイト結晶でびっしり覆われていました。
こうしたバイオコーティングは、ロブスターのような海洋甲殻類に見られるもので、昆虫では普通見られません。
しかし、キュリー氏は「昆虫は甲殻類から進化したので、似たようなボディアーマーを発達させてもおかしくはない」と指摘します。