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太陽風による粒子の削りが土の違いをうんでいた
月の土でも植物は育つが理想とは程遠い
太陽風による粒子の削りが土の違いをうんでいた
なぜ同じ月の土なのに生育に差をうんだのか?
謎を解明するため研究者たちは、アポロ11号・12号・17号のそれぞれが採取した月の土の性質を比較しました。
するとアポロ11号が着陸した場所は他の場所に比べて太陽風の影響が強く「劣化した土」となっていました。
月は守ってくれる磁場が弱く大気もないため太陽風が直に地上に衝突してしまいます。
(※太陽風は太陽から吹き出た高エネルギーの荷電粒子(プラズマ)です。地球は磁場に守られているためほとんど地上には到達しません)
太陽風が衝突すると月の土の粒子は削られ、徐々に細分化されていきます。
そして劣化が進んだ土では粒子のサイズが減少して表面積が増えイオン流出が加速していると考えられます。
また粒子が削れるとナノサイズの鉄の増加も引き起こしている可能性も示されています。
一方でアポロ17号が着陸した周辺の土は太陽風の影響が少ない「劣化の小さい土」でした。
劣化の小さい土の場合、粒子サイズは大きくなっています。
このことから研究者たちは粒子の小ささやナノサイズの鉄の存在が植物に対してストレスとして働き、生育を阻害する要因になったと結論しています。
これらの結果は、月にも植物の生育に向いている土とそうでない土があり、その判断材料として粒子サイズが使用できることを示します。
もし将来的に月面基地で月の土を使って農業を行うとしたら「劣化の小さい土」がある場所が有望な場所となるでしょう。
月の土でも植物は育つが理想とは程遠い
今回の研究により、月の土でも地球の植物が発芽・成長できることが示されました。
月の土には危惧していた植物の発芽と成長を停止させるような積極的な要素は含まれてはいませんでした。
ただ植物にとって月の土は非常にストレスの強い土として認識されており、人工土にはみられなかった酷い発育不全を起こす個体がみられました。
一方で植物の受けるストレスは月の土を採取した場所によって大きく異なることも判明します。
太陽風の影響を長く受けた「劣化した土」では粒子サイズが減少し、植物にとってストレスの多い土となっていたものの、太陽風の影響が少ない「劣化の小さな土」では粒子サイズが大きく、比較的良好な生育がみられました。
この結果は、月での農業を営む場合に「いい土」と「悪い土」があることを意味しており、将来の月面基地建設にあたり、有用な基礎情報となるでしょう。
研究者たちは今後も月の土での実験を続けることで、良好な生育が行える植物を開発できると述べています。
参考文献
A first: Scientists grow plants in soil from the moon
元論文
Plants grown in Apollo lunar regolith present stress-associated transcriptomes that inform prospects for lunar exploration
提供元・ナゾロジー
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