Q. モラルハザードでだれが困るんですか?
損害は納税者や健康保険の被保険者が薄く広く負担するので、気がつきません。しかし病床確保については、全体で1兆円以上の予算が使われており、その負担のために一時的に健康保険料が値上げされています。
Q. どうすればモラルハザードはなくせるんですか?
今の医療制度は性善説で、役所の決めたことを病院は正直に実行すると信じているので、法律では「要請」や「勧告」しかできません。これは都立病院のように都と利害の一致している病院ならいいのですが、コロナで経営の大変な民間病院は、病床を水増しするかもしれません。こういうときは、役所が病院を監督して命令する権限が必要です。
Q. でも「正当な理由」があるかどうかは病院しかわかりませんね?
これが情報の非対称性です。役所が病床を個別にチェックするのは大変なので、制度をなおすべきです。たとえばあいたままだと病床確保料を半額にするとか、確保病床を使うと診療報酬を増やすといったインセンティブをつけるべきです。
Q. 現場のお医者さんは「医師を疑うのは許せない」といっていますが?
コロナ病床を確保していても、他の病気で人が足りなくなることはあるでしょう。それは「正当な理由」ですが、それが本当かどうか東京都にはわかりません。このように利害対立があるときは、役所は病院を信用してはいけないのです。
文・池田 信夫/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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