最近の研究により、オーストラリアに生息するハチが空港で大きな脅威になっていると判明しました。

ホウロウドロバチ(学名:Pachodynerus nasidens)が、飛行機の速度計「ピトー管」の穴を短時間で埋めてしまうので、いくつかの飛行機が離陸中止を余儀なくされたり、出発後すぐに引き返したりしていたのです。

このハチたちは通常植物や地面に巣を作りますが、鍵穴などの人工的な穴も巣として利用するため「鍵穴ハチ」とも呼ばれています。

オーストラリアの空港にとって悩みのタネとなってしまった鍵穴ハチの生態を見ていきましょう。

目次
オーストラリアの空港を出発するエアバスA330の速度計測器の不具合が相次ぐ
ホウロウドロバチは一瞬でピトー管に巣を作っていた

オーストラリアの空港を出発するエアバスA330の速度計測器の不具合が相次ぐ

オーストラリアの空港で「ハチの巣」が飛行機を妨害している!?
(画像=エアバスA330-300 / Credit:Masakatsu Ukon / Wikipedia、『ナゾロジー』より引用)

一般的な飛行機にはピトー管と呼ばれる速度計測器がついています。

ピトー管には中央と側面に小さな穴があり、それぞれの穴から流入する空気の圧力差を測ることで、飛行機の対気速度を計測しているのです。

オーストラリアの空港で「ハチの巣」が飛行機を妨害している!?
(画像=ピトー管の概念図 / Credit:mendel / Wikipedia、『ナゾロジー』より引用)

大型航空機には複数のピトー管があり、主にコクポットの下や翼などについています。

これらすべてのピトー管が同じ数値を示しているとき、パイロットは正しい速度を確信しながら飛行できます。

逆に、数値が一致していないならどこかに不具合が生じているかもしれないのです。

これらの数値は飛行において最も危険なタイミングである離着陸の際に特に重要です。

しかし、2006年の最初の3ヵ月だけでもオーストラリアのブリスベン空港を出発する5つのフライトで、一貫性のない対気速度値が計測されました。しかもこれらのフライト全ては同じ機種エアバスA330によるものだったとのこと。

その後、2013年にも同様の問題がエアバスA330に起きており、ブリスベン空港に緊急着陸しています。

そしてオーストラリア運輸安全局の調査の結果、これらの原因がピトー管内に作られたハチの巣だったと判明。このハチの巣はホウロウドロバチによって作られていました。

ホウロウドロバチは一瞬でピトー管に巣を作っていた

ホウロウドロバチはスズメバチ科に属する小さくて黒いハチです。腹部の先端は尖っており、黄色の帯によって黒と黄の縞模様になっています。

もともとはカリブ海と中南米原産のハチなのですが、2010年にオーストラリアのブリスベン港で発見されるようになり、その2年後にはブリスベン空港でも発見されました。

オーストラリアの空港で「ハチの巣」が飛行機を妨害している!?
(画像=ホウロウドロバチ。嗅ぎ合ハチとも呼ばれる / Credit:Cradley, Malvern / Wikipedia、『ナゾロジー』より引用)

このハチは特定の口径の穴に好んで巣をつくる傾向があり、エアバスA330のピトー管は彼らにとって「丁度良い大きさ」だったようです。

実際、ブリスベン空港の作業員や研究員が、飛行機が到着してから1分以内にハチが飛行機の周りを飛び回っているのを発見しています。

彼らによると「着陸したばかりの飛行機のピトー管は熱すぎるので、冷えるのを待っているのだろう」とのこと。

ホウロウドロバチはピトー管が冷えてから内部をチェックします。

営巣地として適切だと判断するなら、外部から毛虫などのエサを持ってきてピトー管内に詰め込みます。

それから隣に卵を産み、泥で薄い壁を作って密閉。やがて卵が孵化し、幼虫はエサを食べて成長していくのです。

しかもホウロウドロバチの巣作りは非常に素早く、飛行機が空港に待機するわずか2時間で作り終えることが可能。

2015年8月には、A320のフライトにおいて温度計の穴がハチの巣で埋められてしまいました。しかもA320はブリスベン空港に30分しか滞在していなかったのです。