三葉虫は、古生代(約5億4100万〜2億5190万年)の海に大繁栄した節足動物で、これまでに約2万種が知られています。
その一方で、彼らの交尾の仕方について教えてくれる化石は、ほとんど見つかっていません。
群れで寄り集まっている化石はあるものの、どのような姿勢で交尾していたのかはわかっていないのです。
しかしこのほど、米ハーバード大学(Harvard University)の研究で、三葉虫の交尾方法を明示する化石が発見されました。
それによるとオスは、腹部の下側にある短い付属肢を「留め具」のようにして、自らをメスの体に固定していたとのことです。
研究の詳細は、2022年5月6日付で科学雑誌『Geology』に掲載されています。
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他の三葉虫にはない「留め具」のような脚を発見
ハーバード大の進化生物学者で、本研究主任のサラ・ロッソ(Sarah Losso)氏は、カナダのロイヤル・オンタリオ博物館(ROM)に保管されている化石を調べていた際、三葉虫の一種である「オレノイデス・セラトゥス(Olenoides serratus)」の驚くべき化石に遭遇しました。
この化石はカナディアン・ロッキーにあるバージェス頁岩から出土した、約5億800万年前のカンブリア紀のもので、きわめて状態のよい「付属肢」が残されていたのです。
「三葉虫の化石は通常、硬い外殻だけが残り、柔らかい付属肢が化石になることは滅多にない」と、ロッソ氏は話します。
現に、約2万種の三葉虫のうち、付属肢が確認されている化石はわずか38種だけだという。
さらにロッソ氏は、このO. セラトゥスの化石に、他種の三葉虫には見られない付属肢があることに気づきました。
その付属肢は、腹部下の中央部にあり、前後の脚に比べて、幅が狭量で長さも短かったのです。
また、この短い付属肢にはトゲが生えていませんでした。
トゲは、三葉虫の付属肢によく見られる特徴で、エサを細かくするのに役立ったとされます。
つまり、この短い脚は、食事以外の役割があったことを示唆するものです。
そこでロッソ氏と研究チームは、O. セラトゥスの付属肢を、昆虫・クモ・カニなど現存する多くの節足動物の付属肢と比較しました。
その結果、この奇妙な付属肢は、交尾の際にメスを固定する「留め具」であることが判明したのです。
では具体的に、どのような使い方をしていたのでしょうか?