鳥類は恐竜から進化の枝分かれをして誕生した種だと考えられています。
この枝分かれの際には、さまざまな飛行形態が試され、中には哀れにも進化に失敗してしまった種もいたようです。
10月22日にオープンアクセスジャーナル『iScience』に発表された研究では、2種の翼を獲得した小さな恐竜の飛行方法が検証されており、この2種は飛ぶのが下手過ぎたため数百万年程度で絶滅してしまったと報告しています。
なんだか可哀想な気もしますが、進化に失敗してしまった種というのは興味深い話です。
翼を獲得した恐竜
今回研究の対象とされたのは「イー」と「アンボプテリクス」と呼ばれる2種の翼を持った恐竜です。
この2種は、約1億6000万年前後期ジュラ紀の中国にいた体重約1kg程度の小型の恐竜です。彼らは獣脚類(ティラノサウルスなど2足歩行の恐竜)から鳥類へと派生していったグループの1つだと考えられていますが、その中でもかなり特殊な例だったようです。
ほとんどの獣脚類は地上を好む肉食動物でしたが、イーとアンボプテリクスは木の上に住み、昆虫や種子、植物などを食べて生活していました。
彼らはコウモリのような翼膜を持ち、木から木へとモモンガやムササビのように滑空していたと考えられています。
失われた軟組織を見るレーザー技術
中国の香港大学とアメリカ・マウント・マーティ大学の研究チームによる今回の研究では、2種の恐竜が実際どのように飛行していたかが検証されました。
化石から飛び方をどのように調べるのかというと、そこではレーザー励起蛍光法(Laser Induced Fluorescence、略称: LIF あるいはLaser Stimulated Fluorescence、略称: LSF)と呼ばれるレーザー画像技術が利用されています。
レーザー励起蛍光法は、強力なレーザー光を化石標本に照射してどの波長が反射するかを調査します。これによって、肉眼では見ることのできない失われた皮膚や筋肉など軟組織の痕跡を見つけマッピングすることができるのです。
こうした新しい技術の登場によって、現在の研究では絶滅した古生物がかつてどのように活動していたかを探ることができるようになっているのです。
チームはこの手法を使って化石をスキャンし、数学モデルを作って2種の恐竜の体重、翼の幅、筋肉の配置などを、さまざまな変数でテストし、彼らがどのように飛んでいたかを予測しました。