もし、一生で稼ぐ所得よりも、一生で使う支出のほうが多い場合、生活はどうなってしまうのでしょうか?ここでは、日本人の生涯所得と生涯支出について、公式データを使って計算してみました。そこから見えてきたのは、給与所得以外の収入の必要性です。
目次
生涯で稼ぐ所得はどのくらい?
生涯で使う支出はどのくらい?
生涯で稼ぐ所得はどのくらい?
独立行政法人労働政策研究・研修機構が2018年に行った調査「 ユースフル労働統計2018 」によると、2016年の大卒・大学院卒の人たちが得る、退職金を含まない60才までの生涯賃金は男性で2億7,000万円、女性で2億2,000万円となっています。退職金と雇用延長による収入を含めると、同グループの男性の生涯賃金は平均で3億3,000円です。
しかしこの金額は大学または大学院を卒業して新卒で大企業に就職し、正社員として60歳定年までフルタイムで働くことができた人の生涯年収です。イメージとしてはピーク時の年収が600万円を超える人がこのグループに入ります。しかし全国で見るとそのような人はむしろ少数派で、実際の生涯年収は学歴・雇用形態・性別・企業規模・勤続年数によって大きく異なります。また大企業といっても退職金制度も変わってきており、今後も同じ金額を期待できるかはわかりません。
そして生涯賃金は、1990年代と比較して減少しています。
生涯で使う支出はどのくらい?
一方、一生のうち消費する金額である生涯支出はどうでしょうか?総務省の家計調査によると、 2017年における2人以上の勤労世帯の消費支出 は月平均28万3,027円です。1年にして約339万円、 所得税や社会保障費 を含めると約373万円の支出をしています。仮に就職してから60歳まで38年勤務した場合の支出は、単純計算で約1億4,200万円になります。
支出に関しても近年は減少傾向です。しかし、この金額には住宅ローンの支払いが含まれていません。総務省統計局の「 第8表(住宅ローン返済世帯)世帯主の年齢階級別1世帯当たり1か月間の収入と支出 」によると2016年度の土地家屋借金返済(住宅ローン)の平均返済月額は9万2,549円です。35年返済なら単純計算で約3,890万円ということになります。
さらに、子どもの数が多ければ、その分教育費も増えます。2018年に株式会社日本政策金融公庫が発表した「 教育費負担の実態調査結果 」によると、2016年度の高校入学から大学卒業までに必要な入在学費用は子どもひとり当たり935.3万円です。私立や理系、医歯学部だとさらに高くなります。すべてを合計すると約1億9,000万円ということになり、先ほどの生涯所得の金額を考えると、十分に足りると言い切れる家庭はそう多くないのではないでしょうか。