世の中には、さまざまなパズルが存在しています。
ポピュラーな「知恵の輪」「ジグソーパズル」だけでなく、数学パズルや言葉遊びなどもパズルに含まれるでしょう。
そんなパズルとは、人間が人間の知性に対して仕掛けた挑戦であり、それは古来より秘密を守る封印としても利用されてきました。
ここでは、何世紀にもわたって人々を悩ませてきた秀逸な謎たる「いにしえのパズル」を紹介します。
目次
古代ローマの「パズルロック」
中国の「悪魔のワークボール」
古代ローマの「パズルロック」
難しいパズルは解ける人が限られるため、錠前(錠と鍵)として利用できます。
約2000年前の古代ローマでは、パズル型の南京錠が利用されていました。
この指輪サイズの南京錠はブロンズ製で、表面にはローマ神話のヤヌスのモチーフが彫られています。
この南京錠を開けるには指輪型の鍵が必要ですが、鍵穴に鍵をさすだけではロックを解除できません。
錠前には小さなプレートやスイッチが隠されており、それらを順番に動かすことで解除できるのです。
ちなみにこの「パズルロック」は、主に貴重品を送る際の「改ざん防止の封」として利用されました。
差出人と受取人だけが鍵と解除方法を共有することで、パズルロックありの袋の中身が誰にも改ざんされていないことを保証したのです。
あたかも現代のインターネットで使われる暗号鍵技術のようですね。
ちなみに、現存するパズルロックはどれも正常に作動しません。
しかしながら、レプリカが作られており、そちらでは従来のパズルを楽しめるようです。
中国の「悪魔のワークボール」
18世紀の中国には、「悪魔のワークボール(devil’s work ball)」と呼ばれる彫刻がありました。
材料には象牙が使用されており、独特の色合いと繊細なデザインが特徴的です。
現在では象牙の商業取引が原則禁止となっているため、同様の物が新しく作られることはないでしょう。
さて、悪魔のワークボールは、これ以上分解したり組み立てたりすることができません。
しかし、多くの人はこれを「パズルボール」と呼んできました。
その理由は、その構造と作り方にあります。
悪魔のワークボールは、彫刻の施されたボールの中に、別のボールが入っています。
しかも内側のボールの中には、さらに別のボールが入っており、ある作品では合計9層にもなるのだとか。
そしてこのワークボールすべては、1つの象牙の塊を削って作られています。
カプセルのように、半球を接着して内側にボールを閉じ込めるのではなく、9層すべてをただ削るだけで作り上げているのです。
では、どのように9層のボールを彫刻するのでしょうか?
この「彫刻プロセスの謎」こそが彫刻家にとってのパズルであり、現存する悪魔のワークボール自体が「パズルが完成した」ことを証明しています。
専門家によると、パズルボールの彫刻方法は、次の手順で行われるようです。
- 象牙の塊をボール状に削る
- その後、中心に向かって円錐型の穴を開ける
- L字型の特殊な彫刻刀を使い、内側をくりぬくようにして、外層から内側のボールを切り離す
- 同様の作業を繰り返し、複数の層をつくる
- それぞれの層の表面に彫刻を施す 言うだけなら簡単ですが、実際に作業を行える人はほとんどいないでしょう。
ちなみに、「完成品の穴を全層そろえる」というパズル的な遊び方もできるようです。
とはいえ作品自体が非常にもろいため、この方法で遊ぶ人はいません。
彫刻家が完成させたパズルとして、見て楽しむのが最善のようです。