ケイシー・ビエター流スピードトレーニング
ケイシー・ビエターと言えば、高強度トレーニングを積極的に行っていたボディビルダーとして有名だが、実はスピードトレーニングも実践していた。
彼の場合も1秒でウエイトを押し上げるやり方で、そのスピードを維持できる範囲での高重量を用いていた。また、レップを繰り返してスピードが維持できなくなると、スティッキングポイントの可動域に限定して、動作をより高速にして行っていた。
ケイシーは、通常のトレーニングでは、レップをゆっくり繰り返すことで筋緊張時間を長くしていた。1、2セットしか行わなくても強い刺激が得られるやり方だが、一般的に、このやり方でフルレンジでの動作がキツくなってくると、動作がブレたり、雑になってくる。それでも反動を使ってレップをこなそうとするため、対象筋以外の筋肉が運動に参加してしまうことになる。当然、そのようなやり方はエネルギーと時間を無駄にしてしまう場合もあり、最悪の場合はケガを負うことにもなる。
では、反動を使ったチーティングを避けながら、レップをさらに繰り返すにはどうすればいいのか。ケイシーの場合は、そのようなケースでもスピードトレーニングを取り入れていた。
つまり、ゆっくりした動作でフルレンジの動作が続けられなくなったら、スピードトレーニングに切り替えていたのだ。スピードレップは反動を使うのとは違う。しかも、すでにゆっくりしたやり方で対象筋はかなり限界まで追い込まれているため、この段階で速いテンポでレップを繰り返すことは容易ではない。それでも、可能な限りレップのスピードを上げることで、あと2、3レップは行うことができ、真の限界に達することができるはずだ。
動作の速度に集中すると、脳は対象筋に連続した刺激を繰り返し送る。それによって筋肉はより多くの筋線維を運動に参加させるようになる。限界に近いところまで追い込んだ筋肉に、速いテンポでの動作を行おうとすると、ゆっくりした動作では刺激されなかった筋線維も動作に参加してくるので、真の限界に達することが可能になると考えられるのだ。
もちろん、ほぼ限界状態からテンポを上げる場合でも正しいフォームを維持したい。どんなやり方で種目を行うにしても、基本となるフォームは守るようにしよう。
スティーブ・ホルマン流スピードトレーニング
アイアンマンマガジンの元編集長であり、POF法を考案したスティーブ・ホルマンもまた、スピードトレーニングを支持していた。彼は、ハイスピードでの動作は、筋肉と神経の連動性を高めると考えていたのだ。
選択する重量は、いつものトレーニングで用いる重量よりも軽くし、下ろす動作には3秒ほどかけて、ボトムからトップまでは瞬発的に素早く挙上するというのがホルマンの提唱したスピードトレーニングのやり方である。
下ろす動作がゆっくりなのは、筋肉がストレッチされる過程を丁寧に行うことで、筋断裂などのケガを避けることができるからだ。
ウエイトをゆっくり下ろして筋肉をストレッチさせたら、そこからさらにさらに瞬間的に深くウエイトを下ろすことで過伸展が起きる。この過伸展はバネを戻すような反応を生み、筋肉は瞬時にトップまでウエイトを挙上して強く収縮するようになる。この一連の動作が、より多くの筋線維を運動に参加させるのだ。さらに神経系も活性化されるので、より強い刺激が目的の筋肉にもたらされる。
実際に、このスティーブ・ホルマン流のスピードトレーニングで、多くのトレーニーが大きな効果を手に入れてきたのだ。
もちろん、このようなトレーニングを行う場合はウォームアップが必須であることは言うまでもない。スティーブ・ホルマン流のスピードトレーニングは、ワークアウトの最初の種目として行うのがベストだ。
スピードトレーニングの特徴
速いテンポでレップを繰り返すスピードトレーニングだが、セットあたりに行うレップ数は決して多くはない。スピードトレーニングを指導するコーチたちによると、効率よく瞬発力を発揮することができるのは2~5レップ程度だと述べている。
つまり、スピードトレーニングは高回数で行う必要はなく、セットあたり2~5レップに設定し、セット数を多めに行うほうが有効のようだ。
パワーリフティングでは、セットあたり2レップの瞬発的な動作を5~10セット行うというトレーニング法がある。このようなやり方は「スピードを重視する日」のワークアウトに採用されることが多い。
また、セット間の休憩時間をできるだけ短くするのもスピードトレーニングの特徴だ。自己記録に挑戦するようなときは5分程度のセット間休憩を取ったりするが、スピードトレーニングの場合は40~90秒のセット間休憩で十分に疲労の回復を促すことができる。
ボディビルダーがスピードトレーニングを取り入れるなら最初の種目で行い、3、4セットで完了させる。そして、1種目目のスピードトレーニングを終えたら、それ以降の種目は通常のやり方で行い、全体のワークアウト量が大幅に減少してしまわないようにしよう。
もちろん、ボディビルダーでも、パワーリフターがやっているようなスピードトレーニングを行うことも可能だ。その場合、スピードトレーニングを行う種目では10セット以上をこなすようにし、それ以外の補助種目は少なく制限するといいだろう。