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火星の昼間の空が赤く夕焼けが空が青い理由
地球の空の色はレイリー散乱、火星の空の色はミー散乱が支配する

火星の昼間の空が赤く夕焼けが空が青い理由

火星の夕焼けはなぜ「青い」のか? 光の散乱と大気の美しい関係
(画像=赤色散乱ポイントから近い昼間の空は赤く見え、遠い夕暮れの空は青く見える / Credit:Canva . ナゾロジー編集部、『ナゾロジー』より引用)

なぜ火星の空の色は地球と逆なのか?

その第一の理由は、火星と地球の大気成分の違いにあります。

火星の大気は地球と比べて粒子が小さい空気分子が極端に少ない一方で、粒子が大きい塵(赤茶色の砂粒)が非常に多くなっています。

火星にもかつては空気分子が多く存在したと考えられていますが、火星の重力が弱いせいでほとんどが宇宙空間に逃げてしまい、大気圧は地球の約135分の1となっています。

(※地球の大気圧は平均1013 hPaある一方で火星の大気圧はわずか7.5 hPaです)

ですが全く空気がない月などとは違って、風も吹き嵐も起こるため、低い重力も相まって、大量の塵が空に舞い上がっているのです。

そのため火星で太陽の光と主に相互作用するのは粒子が小さい空気分子ではなく、粒子が大きな「塵」になります。

一方で、光には自分の波長と近いサイズの粒子に対して最も散乱しやすくなるという性質があります。

この性質のために、地球に来た可視光は空気分子に最も近いサイズである、紫と青が真っ先に散乱しました。

しかし火星の大気では空気分子は脇役で、大きな砂粒からなる「塵」が主役となります。

そのため火星にやってきた可視光は塵に当たって赤色の散乱を起こし、火星の昼間の空は、赤色に染まります(ミー散乱)。

ではなぜ火星の夕焼け空は青くなるのでしょうか?

ここでも基本となるのは「遠くで散乱した光は目に届きにくい」という事実です。

火星の日没を迎えた地点では、太陽の光は上からではなく横から届くため、昼間よりも長く火星の大気(塵)の中を進むことになります。

すると、赤い光は塵に当たって早い段階で散乱してしまう一方で、塵に影響を受けにくい青色の光は真っ直ぐ進んで目に届きます。

火星に空気分子が多く海もあって乾燥していなかった時代(38億年前)には、地球と同じく昼間の空は青く、夕焼け空は赤かったかでしょう。

しかし空気分子の多くが海とともに失われ、乾燥した地表から舞い上がった塵で空が覆われた結果、火星では昼間の赤い空と青い夕焼けがみられるようになったのです。

地球の空の色はレイリー散乱、火星の空の色はミー散乱が支配する

火星の夕焼けはなぜ「青い」のか? 光の散乱と大気の美しい関係
(画像=大気が全くない場合、ただ宇宙がみえるだけである / Credit:Canva . ナゾロジー編集部、『ナゾロジー』より引用)

火星探査が進んだことによって、火星の夕焼けの色が明らかになりました。

地球の空の色は主に小さな空気分子が起こす光の散乱(レイリー散乱)によって決まります。

ですが火星の空の色は大きな塵が起こす光の散乱(ミー散乱)が決めていました。

空の色は、雑多な色を含む太陽の光が「何に」「どの順番」で衝突するかによって決められていたのです。

そのため大気が全く存在せず塵も舞わない月では、太陽の光は何とも相互作用しないため、空の色は常に、宇宙の色を透かした黒になります。

火星の夕焼けはなぜ「青い」のか? 光の散乱と大気の美しい関係
(画像=大気が分厚すぎると太陽の光が地表に届かず空は真っ黒になる / Credit:Canva . ナゾロジー編集部、『ナゾロジー』より引用)

一方、分厚い大気によって覆われている金星では、太陽の光は雲に遮られ全く地表に届かないため、地表から見上げた空の色も常に黒となります。

地球や火星の空が特定の色に染まり、時間帯によって色を変えるのは、ほどほどの大気を持っているからだったのです。


参考文献

Sprit Captures a Sunset on Mars

Why Do Sunsets On Mars Look Blue?


提供元・ナゾロジー

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