2005年にNASAによって撮影された火星の日没には、青白い太陽と青色の夕焼け空が広がっている様子がみられます。
地球では昼間の空は青く、夕暮れの空は赤くなりますが、火星はその逆で、昼間の空は赤く、夕暮れの空は青くなっているようです。
2つの星の空はなぜこんなにも違うのでしょうか?
今回は、火星の夕焼けが青くなる理由を、地球の空の色と一緒に解説したいと思います。
目次
光源となる太陽は全ての色を発している
地球の昼間の空が青く夕焼けが赤い理由
光源となる太陽は全ての色を発している
太陽が発する光をヒトの目を基準に分けると大きく3つに分類されます。
波長が短すぎてみえない紫外線、逆に波長が長すぎてみえない赤外線、そしてそれらの間に存在するヒトの目が感知できる可視光の領域です。
可視光の波長は380~780ナノメートル程度とされており、ヒトの目は波長の短い順に
紫<藍<青<緑<黄色<オレンジ<赤
となって移ります。
ここで重要となってくるのが小さな粒子に対しては「波長の長さによって回避できる粒子のサイズに違いがある」という点です。
そのため上の図のように、波長が短い光は小さな粒子にも当たってしまう一方で、波長が長い光は大きな粒子の間でも素通りすることが可能です。
地球の大気の主成分は粒子としてはかなり小さい、8割の窒素分子と2割の酸素分子によって構成されています。
そのため太陽から発せられた雑多な光が地球の大気に衝突すると、可視光のなかでは波長が最も短い紫、次いで青色の波長が散乱します(レイリー散乱)。
ですが私たちの目に紫色が届くことはまれです。
紫色の光は大気の上層で散乱しきってしまうからです。
散乱が起きた紫の光はその場でさまざまな方向へ向けて飛んでいきます。
当然ながら横方向や宇宙方向へ散乱した光は、地表にいる私たちの目には届きません。
一方で、青色の場合は大気の比較的低い層で散乱が起こります。
そのため私たちの目には紫よりも青色の光が優勢となり「空は青い」と認識されます。
紫色の空をみたい場合は、高い山に登ったり飛行機に乗るといいでしょう。
飛行機や高い山の上からみる空は、地表と違ってやや紫がかっていることが知られています。
高度が高い場所に行くことで、紫色の光の散乱が起こる場所に近づけるからです。
この「遠くで散乱する光は目に届きにくい」という概念は、次の地球の夕焼けが赤くなる理由においても非常に重要になります。
地球の昼間の空が青く夕焼けが赤い理由
地球の昼間の空が青い理由は、私たちの目の近くで青色の光が散乱しているからでした。
では、同じ場所から空を見ているのに、なぜ地球の夕焼け空は赤くなるのでしょうか?
ここで役立つのが、前ページにある「遠くで散乱する光は地表に届きにくい」という知識になります。
上の図のように、夕焼けになる時刻になると、太陽の位置は上から横方向に移動し、光が大気を進む距離が伸びます。
この場合でもまず最初に、紫色の光が散乱し、次に青色の光が散乱します。
しかし太陽との位置関係のせいで、青色の光の散乱が起きる場所が昼間に比べてずっとずっと遠くなってしまうのです。
「遠くで散乱する光は目に届きにくい」ため、私たちの目には紫色だけでなく青色の光も届きにくくなってしまいます。
一方で、地球の大気分子を素通りしやすいオレンジ色や赤色の光は大気を進む距離が増えてもあまり影響を受けません。
そのため表付近ではオレンジや赤色が優勢になり、私たちの目に夕焼け空がオレンジや赤色に見えるようになるのです。
つまり地球の昼間の空が青いのは私たちの目の近くで青色が最も散乱しているからであり、夕焼け空が赤くなるのは、太陽が発する雑多な光のうち、赤色が最も目に届きやすくなるから…と言えるでしょう。
どちらも光の散乱という物理現象を基本にしていますが、青空の色は散乱した光の色であり、夕焼け空の色は散乱しなかった生き残りの光の色という点で異なっています。
ではそうなると、なぜ火星の空の色は地球の逆に、昼間が赤く夕暮れ時に青くなるのでしょうか?
光の散乱という物理現象が火星では通用しないのでしょうか?