恐竜は長年、今日のトカゲのように毛のない鱗に覆われている、と考えられてきました。
ところが、ここ数十年の相次ぐ化石の発見により、鳥類のような羽毛を持っていた可能性が指摘されています。
一方で、同時代に空を支配していた爬虫類の「翼竜(pterosaurs)」については、羽毛があったかどうかわからず、論争に決着がついていません。
しかし今回、アイルランド国立大学コーク校(University College Cork)らの研究で、ブラジルで新たに見つかった化石から、翼竜が羽毛を備えていた証拠が発見されました。
しかも、羽毛には多様で鮮やかな色もあった可能性が示されています。
研究の詳細は、2022年4月20日付で科学雑誌『Nature』に掲載されました。
鳥類と同じ「枝分かれした羽毛」を発見!
翼竜の化石には、過去にも「毛のようなふわふわしたもの」が見つかっていた例があります。
ただ研究者らは、これが枝分かれしていない単一のフィラメント状(糸状の構造)であることから、「ピクノファイバー」と命名し、羽毛とは別物と考えてきました。
恐竜の化石に見られる羽毛にはちゃんと、鳥類と同じ「羽軸」と「羽枝」があります。
そのため、翼竜に羽毛があるとは断定されていませんでした。
しかし研究チームは今回、ブラジル北東部の岩板に保存されていた、約1億1300万年前の「トゥパンダクティルス・インペラトール(Tupandactylus imperator)」の化石を新たに発見。
そこに残された羽毛の痕跡を特定しました。
トゥパンダクティルスは、白亜紀(約1億4500万〜6600万年前)の前期から存在した翼竜で、頭部の巨大なトサカが特徴的です。
新たな化石標本には、頭頂部から生え出るピクノファイバーだけでなく、羽毛のように、中央の軸から枝分かれした短い繊維を持つ構造が発見されました。
これは、翼竜では過去に報告された例がありません。
研究主任のアウデ・シンコッタ(Aude Cincotta)氏は「この分岐構造は、現存する鳥類の羽毛、すなわち羽軸から分岐した羽枝に相当する」と指摘。
「化石標本では、現在の鳥と同じように全身にわたって羽毛が確認されたため、長年の論争に終止符を打つ確かな証拠となります」
研究チームによると、翼竜の羽毛は、恐竜との共通祖先から受け継がれたと予測されますが、別々に独自に進化した可能性もあるという。
さらにこの羽毛には、驚くべき特徴が残っていました。