I.サカイエンシスがマイクロプラスチック問題の切り札になるかもしれない

今回の研究により、I.サカイエンシスはPETを分解して生分解性プラスチック(ポリヒドロキシ酪酸)を合成して溜め込む性質があることが示されました。
ポリヒドロキシ酪酸はプラスチックの性質を持つ一方でケトン体の重合化合物であり、私たち人間や動物の腸内細菌はこれを分解することでエネルギーを得て活性化することができます。
また分解してできたケトン体が腸から吸収されることで、人間や動物はケトン体をとるのと同じ効果を得ることが可能になります。
現状においてはI.サカイエンシスをPET処理の要として工業的に用いるには力不足ですが、改良が進めば、PETから健康食品が生産される日が来るかもしれません。
またI.サカイエンシスをマイクロプラスチックの汚染が深刻な湖などで繁殖させることができれば、生分解性プラスチックを経て、完全に分解できる可能性もあります。
プラスチックまみれの世界で進化した生物が、プラスチック問題を解決する切り札になるかもしれません。
参考文献
How a bacterium may help solve the plastic pollution crisis
vol.27(2018年5月号~2019年1月号) バイオサイエンス領域 環境微生物学研究室
元論文
Direct fermentative conversion of poly(ethylene terephthalate) into poly(hydroxyalkanoate) by Ideonella sakaiensis
提供元・ナゾロジー
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