ペットボトルを食べて生分解性プラを作る細菌がいるようです。
日本の奈良先端科学技術大学院大学で行われた研究によれば、ペットボトルなど「自然に分解されないプラスチック(以降PET)」を食べる細菌には、「生分解性のプラスチック(PHB)」を合成する能力もあった、とのこと。
この奇妙な細菌(I.サカイエンシス)はPETのリサイクル工場から採取されたサンプルに含まれていました。
PETが大量にある環境で進化が促され、PETを分解してエネルギーを取り出す能力を獲得したのだと考えられます。
研究内容の詳細は10月7日に『Scientific Reports』に公開されています。
目次
プラスチックまみれの世界で進化した種を探す
PETの分解物は人間や動物が健康食品として食べれる
プラスチックまみれの世界で進化した種を探す

ここ数年の間に、マイクロプラスチックは環境問題として認知されるようになりました。
原因は、石油から作られたPET(ペットボトルの材料)などの人工物を、自然界に存在する細菌が分解できないからです。
しかし日本の奈良先端科学技術大学院大学の研究者たちは、世界中がプラスチックまみれになったことで、環境適応するためPETを利用する種が誕生している可能性に目をつけます。
研究者たちはPETにかかわるさまざまな施設から細菌サンプルを集め、PETを食べる細菌がいるかを調べました。
結果します。

I.サカイエンシスは2種類のユニークな酵素でPETをエチレングリコールとテフタル酸に変換し、最終的には二酸化炭素と水にまで分解することが可能です。
しかし今回の研究では、I.サカイエンシスがPETを分解するだけでなく、生分解性のプラスチックであり細菌のエネルギー基質としても利用可能な「ポリヒドロキシ酪酸(PHB)」に変換して、細胞内部に溜め込んでいることも判明しました(※ここで言うポリヒドロキシ酪酸はpoly(3-hydroxybutyrate)のことです)。

ジャガイモやイネなどは、光合成によってエネルギーを「でんぷん」の形で保存しますが、PETを食べるI.サカイエンシスは生分解性プラスチック(ポリヒドロキシ酪酸)の形で細胞内にエネルギーをため込んでいるのです。
しかしより興味深い点は、生分解性プラスチック(ポリヒドロキシ酪酸)を人間や動物が食べられるという点にあります。
PETの分解物は人間や動物が健康食品として食べれる

I.サカイエンシスがPETを分解して作る生分解性プラスチック(ポリヒドロキシ酪酸)は、プラスチックと名前がついていながら、人間や動物が食べて自分たちの腸内細菌のエサとすることができます。
人間はポリヒドロキシ酪酸を分解できませんが、人間の腸に住む腸内細菌はポリヒドロキシ酪酸を分解してケトン体を作り、これを腸から吸収することで人間はケトン体を食べたのと同じ効果が得られるのです。
つまり、I.サカイエンシスはゴミにしかならなかったPETから、人間や動物の健康食品を作ることが可能なのです。