医療保険・生命保険を選ぶ際には、将来への不安への備えと保険料の負担感とのバランスが重要だ。しかし保険商品の複雑な仕組みのせいでマネーリテラシーの低い人ほど不要な保険に加入してしまう可能性がある。放置しておくと後々保険料負担に悩まされることになりやすいため、注意が必要だ。

スポーツマン以外には不要な特約も

医療保険・生命保険については、万が一を考えて万全の備えにしておきたいと考える人が多いだろう。しかし家計を考えると保険料負担もよく考慮すべきだ。まずは、不要な保険に加入していないかどうか再検討してみよう。

医療保険の減額は可能か?

医療保険のうち入金給付金については、万が一のときに1日あたりの保険金が高いほうが安心なのは間違いない。しかし資産に余裕があり予期せぬ入院時にある程度貯蓄から支払えそうな場合は、減額を考えてもいいだろう。入院給付金を日額1万円に設定した場合、その分の毎月の保険料は30歳から終身払いならば3,000円程度となる。

例えば50年間支払った場合は、総額180万円となるので入院が50年間のトータルで180日を超えた場合に保険のメリットが出てくるということだ。50年間で180日というのは、単純計算すれば10年間あたりでは36日となる。もちろん健康状態や遺伝的な体質、仕事や家庭の環境などは各自で大きく異なってくるため、一概にはいえない。

コツコツと貯金できるタイプであれば貯金からある程度入院費を払うことも考慮し入金給付金日額7,000円や5,000円のコースを検討してみてもいいだろう。

不要な特約に入っていないか?

生命保険のオプション部分にあたる「特約」は、ついあれもこれもと追加したくなるものだ。しかし追加した分だけ保険料が高くなることは言うまでもない。特に保険の営業担当者に勧められて加入した場合は、不要な特約がないか見直したほうがいいだろう。見直すべき特約として例えば次のようなものが挙げられる。

・特定損傷保険
骨折・関節脱臼・腱(けん)の断裂の治療を受けた際に一時金を受け取れる特約だ。保険料月額500円の上乗せで5万円の一時金というのが目安となる。骨折リスクのあるスポーツをやっているのでなければ多くの人に不要な特約といっていいだろう。

・重度慢性疾患保障保険
心臓ペースメーカーや慢性腎不全、肝硬変、重い糖尿病などで治療を受けた場合に保険金が支払われる。また死亡した場合は、死亡保険金に特約分の保険金が上乗せされる保険だ。万が一を考えるとつい追加したくなるかもしれない。しかしこれらの疾患リスクの少ない生活習慣の持ち主であれば保険料負担を考えて外すことも検討してみよう。

・災害割増
不慮の事故や災害に伴う死亡や高度障害状態となった場合、通常の保険金に加えて保険金が上乗せされる特約だ。事故や災害は誰にも予測できないが、そうしたリスクの少ない環境に暮らしているなら特約を外すことも検討できる。

生活環境の変化に伴い保険の見直しを

医療保険・生命保険は、長期的な人生設計に関わってくる。そのため仕事や家族構成に変化があった際は、見直しを図りたい。見直しのタイミングとして特に着目したいのは以下の2つだ。

・子どもが働きはじめたとき
子どものいる家庭では、生命保険の死亡保障を大きく設定していることが多い。しかし子どもが巣立って就職した後は、死亡保障を見直してみてもいいだろう。

・住宅ローンでマイホームを購入したとき
住宅ローンの借入時は、原則的に団体信用生命保険をかけなくてはいけない金融機関が多い。団体信用生命保険に加入していると契約者の死亡や高度障害状態が生じた際にローン残高をすべて保険金で相殺できる。つまり住宅ローンの負担がなくなるため、これも計算に入れて生命保険を見直してみよう。

ケースバイケースで検討したい項目

次にケースバイケースで保険料を安くできる工夫について説明しよう。

終身保険の支払い方はどれがお得?

保障が一生涯継続する終身保険では、保険料の払込期間を「60歳まで」「65歳まで」「終身払い」などの選択肢から選べる。このうち終身払いを選択すると保険料がグッと安くなるが一生保険料を払い続ける必要があるため、長生きした場合はお得ではない。ただ受け取れる年金額が比較的多い人は、終身払いを選択して毎月の保険料負担を軽くすることを検討してみてもいいだろう。

制度変更による保険金の変更に注目して見直しを

2018年以前に加入した死亡保険は、新しく保険に加入し直すと新制度により保険料が安くなることがある。ただし個人年金保険や貯蓄性の高い終身保険の場合、逆に保険料が上がるケースもあるため、保険の掛け直しを検討する場合は契約内容をよく確認しよう。

会社の団体保険を検討する

働いている会社で「団体保険制度」が提供されている場合、個人契約の保険よりも割安で加入できる。ただし会社を辞めた場合、その保険は解約され個人で保険加入しなければならないケースも出てくるだろう。年齢が高くなってからの個人での保険加入は、保険料が高額になることが多いため、転職の可能性がある場合は慎重に考えたい。

さらにお得になる裏ワザも!

そのほか保険料がさらにお得になる裏ワザもある。

クレジットカード払いにする

保険料を口座振替などで支払っている人は、クレジットカード払いに切り替えるとクレジット決済に対して付与されるポイント分だけお得になる。このときに注意したいのは以下の3つだ。

・保険料支払い分がポイント付与対象になっているかどうか
・保険料のクレジット払いに金額制限があるかどうか
・ポイント還元率

できればポイント還元率1%以上のカードを利用したい。

まとめ払い割引があれば積極的に活用

年1回のまとめ払いにすると保険料が1~3%割引されることがあるため、保険会社に確認して積極的に活用したい。

禁煙で保険料が安くなる

禁煙に成功した人は、非喫煙者の保険料が安くなるタイプの保険に入り直すことも検討しよう。ただし喫煙者かどうかの検査があるため、ズルはできないと心しておきたい。

保険料は安ければいいわけではない

保険の見直しは、家計の節約に直結するメリットをもたらす。しかし万が一を考えると保険料を安くすればいいわけでもない。ここで紹介したことを参考にしつつライフスタイルや貯蓄のあり方もよく考えたうえで慎重に検討してみてほしい。

執筆・モリソウイチロウ(ライター)
「ZUU online」をはじめ、さまざまな金融・経済専門サイトに寄稿。特にクレジットカード分野では専門サイトでの執筆経験もあり。雑誌、書籍、テレビ、ラジオ、企業広報サイトなどに編集・ライターとして関わってきた経験を持つ。

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