10月6日に、ロジャー・ペンローズ氏を含む3人が、ブラックホールに対する研究業績を認められ、ノーベル賞を受賞しました。

ペンローズ氏はアインシュタインさえ存在を確信できなかったブラックホールを、はじめて数学的に証明した1人です。

他にもペンローズ氏はブラックホールからエネルギーを取り出す「ペンローズ過程」など数多くの業績を上げてきました。

また数学を元に、いくら昇っても元の場所に戻ってきてしまうという不思議な錯覚を考案したのもペンローズ氏であり、この錯覚には彼の名を冠して「ペンローズの階段」と呼ばれています。

さらに! 実はナゾロジーが使用している三角形のロゴも「ペンローズの三角形」と呼ばれる錯覚を利用した作品をモデルにしているのです。

ノーベル賞受賞者の”基本に立ち返る考え方”とは?数学のテストが苦手だった少年が「ブラックホールを証明する」科学者になれる
(画像=ナゾロジーロゴ / credit: ナゾロジー編集部、『ナゾロジー』より引用)

そんな数学の達人であるペンローズ氏ですが、意外なことに、学校の数学のテストは苦手だったのだとか。

いったいどうやって、劣等生だった子供が、ブラックホールの数学的証明に至ったのでしょうか?

目次
数学のテストが苦手だった2人の天才児
劣等生から大学のスターへ

数学のテストが苦手だった2人の天才児

ノーベル賞受賞者の”基本に立ち返る考え方”とは?数学のテストが苦手だった少年が「ブラックホールを証明する」科学者になれる
(画像=アインシュタインもペンローズ卿も数学のテストが苦手だった / Credit:wikipedia . BBC、『ナゾロジー』より引用)

「もしあなたが学校の数学で苦労しているなら、あなたは私の仲間です」

これはペンローズ氏が過去を改装するときに用いた言葉。子供の頃のペンローズ氏は、数学のテストにいつも悩まされていたそうです。

なぜならペンローズ氏はどんなに簡単な問題でも、第一原理(根本的な基本法則)からじっくり考え始めるために、テストの時間内に問題を解くことができなかったのです。

しかし当時の学校の先生は、この将来の天才数学者に足りないのはやる気や能力ではなく時間であると気付き、十分な時間を与えるように取り計らいました。

同じく数学において、教師から低能児だとレッテルを貼られたアインシュタインと比べると、ペンローズ氏は幸せな子供時代を過ごしたと言えるかもしれません。

しかし、20世紀を代表する偉大な物理学者と数学者が、共に数学のテストに悩まされていたというのは注目すべき事実でしょう。

数学が解けない子供でも偉大な学者になる可能性が秘められていたのです。

劣等生から大学のスターへ

ノーベル賞受賞者の”基本に立ち返る考え方”とは?数学のテストが苦手だった少年が「ブラックホールを証明する」科学者になれる
(画像=ペンローズ卿は物体の歪みを取り扱う分野を時空間の歪みに適応した / Credit:国立科学博物館、『ナゾロジー』より引用)

子供時代に数学のテストで苦労したペンローズ氏ですが、大学で本格的に数学を研究するようになると状況は一変します。

どんな簡単な問題でも、基本からじっくり考えるというペンローズ氏の性質が、研究の世界において圧倒的な業績を打ち立てたからです。

そんな若き日のペンローズ氏が特に興味を持ったのが「トポロジー」と呼ばれる物体がねじれたり伸びたりしたときの性質を表す数学の分野でした。

一通りの基礎を学び終えると、ペンローズ氏は、このねしれや伸びの概念を、ブラックホールとその周辺にの時空に適応させはじめます。

アインシュタインの相対性理論によれば、時間も空間もゴムのようにねじれたり伸びたりするからです。

ですがここでもペンローズ氏は時間をかけてじっくりと、第一原理から考えを積み上げていきました。

結果、ペンローズ氏の独創的な理論は1965年、ついに無限の空間の歪みを形成する特異点とブラックホールの存在を、数学的に証明するに至ったのです。