新型コロナショックで多くの資産が下落し、つみたてNISAで投資を行っている人も大きな影響を受けたことだろう。今回はつみたてNISAの対象商品のうち、コロナショックの影響が少なかったバランスファンドをランキング形式で紹介する。相場暴落時に強いバランスファンドはどのような資産配分になっているのかを参考にしてほしい。

目次
1.つみたてNISAでバランスファンドが重要である理由
2.騰落率の小さいバランスファンドランキング
3.コロナ禍のポートフォリオ変更は慎重に

1.つみたてNISA(積立NISA)のリスク調整にバランスファンドの活用が重要である理由

年初より新型コロナショックに見舞われた世界の金融市場は大きな変動を見せた。日経平均株価は2019年の終値である2万3,656.62円から2020年3月31日には1万8,917.01円と3カ月間で20.04%も暴落した。NYダウについても同様に、2019年の終値である2万8,538.44ドルから2020年3月31日には2万1,917.16ドルと3カ月間で-23.20%もの大暴落になった。

このような状況の中、つみたてNISAの対象銘柄においても多くの資産が値下がりした。つみたてNISAの制度が始まった2018年以降で最も大きな金融市場の変動であり、多くの人が今後の先行きや自分の資産を不安視したことだろう。

つみたてNISAの対象商品は原則として株式型のインデックスファンドだが、バランスファンドへ投資をするという選択肢もある。

つみたてNISAにおけるポートフォリオのリスクバランスを調整するためには、このバランスファンドの活用が非常に重要な役割を果たす。つみたてNISAでは投資できない債券やREITといった資産も、バランスファンドを通せば投資を行うことができるからだ。

2. つみたてNISA(積立NISA)で買える!コロナ禍で騰落率の小さいバランスファンドランキングTOP10

つみたてNISAの対象商品であるバランスファンドは全部で76本ある(2020年4月時点)。このうち2019年12月30日から2020年3月31日までの基準価額推移を比較できる72本について、それぞれの基準価額騰落率を計算し、騰落率が低い上位10銘柄をランキング形式で紹介しよう。

騰落率の低いバランスファンドを知り、つみたてNISAのポートフォリオに加えることで、安定的なポートフォリオに近付けることができる。そのファンドの資産配分を知れば、自身のポートフォリオ全体を見つめ直す指針になるかもしれない。
 

順位 国内型or
海外型
指定指数
の数
ファンド名称 運用会社 基準価額
(2019年
12月30日)
基準価額
(2020年
3月31日)
騰落率
1 海外型 8指数 たわらノーロード
最適化バランス
(保守型)
アセット
マネジメントOne
10,325 10,258 -0.65%
2 海外型 4指数 DCニッセイワールド
セレクトファンド
(安定型)
ニッセイアセット
マネジメント
10,469 10,303 -1.59%
3 海外型 8指数 たわらノーロード
バランス
(堅実型)
アセット
マネジメントOne
10,593 10,233 -3.40%
4 海外型 4指数 auスマート・ベーシック
(安定)
auアセット
マネジメント
10,272 9,922 -3.41%
5 海外型 6指数 eMAXIS 最適化バランス
(マイ ゴールキーパー)
三菱UFJ国際投信 10,865 10,379 -4.47%
6 海外型 8指数 Smart-i 8資産バランス
 安定型
りそなアセット
マネジメント
10,732 10,236 -4.62%
7 海外型 4指数 ダイワ・ライフ・バランス30 大和アセット
マネジメント株式会社
16,606 15,745 -5.18%
8 海外型 4指数 DCニッセイワールド
セレクトファンド
(債券重視型)
ニッセイアセット
マネジメント
18,418 17,458 -5.21%
9 海外型 4指数 三井住友・
DC年金バランス30
(債券重点型)
三井住友DSアセット
マネジメント
15,269 14,396 -5.72%
10 海外型 8指数 たわらノーロード
最適化バランス
(安定型)
アセット
マネジメントOne
10,705 10,072 -5.91%
※筆者作成

それぞれのファンドについて、詳細を説明していこう。(※データは2020年6月19日時点)

10位……たわらノーロード 最適化バランス(安定型) 期間騰落率:-5.91%

運用会社……アセットマネジメントOne
基準価額……1万426円
純資産総額……0.34億円
信託報酬……0.50%(税抜)

期間騰落率は-5.91%と日経平均株価やNYダウより非常に小さい。このファンドの資産配分は概ね次のようになっている。
 

※筆者作成

 <資産配分>
国内債券25%、国内株式5%、先進国債券40%、先進国株式9%、新興国債券7%、新興国株式7%、国内REIT9%、海外REIT4%

新興国資産やREITを含めた8資産型のバランスファンドである。全体の7割強の資産を債券が占めている。また、海外資産の配分を高める一方で、一部資産には為替ヘッジを掛けることで、リスクのバランスを取る商品設計となっている。

9位……三井住友・DC年金バランス30(債券重点型) 期間騰落率:-5.72%

運用会社……三井住友DSアセットマネジメント
基準価額……1万4966円
純資産総額……120.89億円
信託報酬……0.22%(税抜)

期間騰落率は-5.72%である。このファンドの資産配分は概ね次のようになっている。
 

※筆者作成

<資産配分>
国内債券60%、国内株式20%、先進国債券10%、先進国株式10%

新興国資産やREITを除いた4資産型のバランスファンドである。国内債券へ6割程度投資を行っており、つみたてNISAにおけるポートフォリオのバランスを取ってくれる
役割を果たすだろう。

8位……DCニッセイワールドセレクトファンド(債券重視型) 期間騰落率:-5.21%

運用会社……ニッセイアセットマネジメント
基準価額……1万8159円
純資産総額……147.28億円
信託報酬……0.14%(税抜)

期間騰落率は-5.21%である。このファンドの資産配分は概ね次のようになっている。
 

※筆者作成

<資産配分>
国内債券50%、国内株式20%、先進国債券20%、先進国株式10%

新興国資産やREITを除いた4資産型のバランスファンドである。国内債券が5割程度、先進国債券が2割程度と全体の7割が債券へ振り向けられている。

7位……ダイワ・ライフ・バランス30 期間騰落率:-5.18%

運用会社……大和アセットマネジメント株式会社
基準価額……1万6397円
純資産総額……154.13億円
信託報酬……0.18%(税抜)

期間騰落率は-5.18%である。このファンドの資産配分は概ね次のようになっている。
 

※筆者作成

<資産配分>
国内債券55%、国内株式20%、先進国債券15%、先進国株式10%

8位、9位のファンドと同様、こちらも新興国資産やREITを除いた4資産型のバランスファンドであり、全体の債券比率が7割となっている。国内債券比率が55%で、8位、9位のファンドの間を取ったような資産構成である。

6位……Smart-i 8資産バランス 安定型 期間騰落率:-4.62%

運用会社……りそなアセットマネジメント
基準価額……1万612円
純資産総額……11.64億円
信託報酬……0.16%(税抜)

期間騰落率は-4.62%である。このファンドの資産配分は概ね次のようになっている。
 

※筆者作成

<資産配分>
国内債券28.5%、国内株式8%、先進国債券44.5%、先進国株式10%、新興国債券2%、新興国株式3%、国内REIT2%、海外REIT2%

新興国資産やREITを含めた8資産型のバランスファンドであり、全体の75%の資産を債券が占めている。また、先進国債券の一部には為替ヘッジを掛けており、8資産型のバランスファンドでありながら、非常に安定度の高い資産配分となっている。

5位……eMAXIS 最適化バランス(マイ ゴールキーパー) 期間騰落率:-4.47%

運用会社……三菱UFJ国際投信
基準価額……1万680円
純資産総額……19.52億円
信託報酬……0.50%(税抜)

期間騰落率は-4.47%である。このファンドの資産配分は概ね次のようになっている。
 

※筆者作成

<資産配分>
国内債券49%、国内株式9%、先進国債券28%、先進国株式9%、国内REIT2%、海外REIT3%

国内と先進国の株式、債券、REITへ投資を行う6資産型のバランスファンドであり、全体の77%を債券が占めている。債券比率を高める一方でREITを通じた不動産市場への投資も行っている。

4位…  auスマート・ベーシック(安定) 期間騰落率:-3.41%

運用会社……auアセットマネジメント
基準価額……1万142円
純資産総額……1.96億円
信託報酬……0.35%程度(税抜)

期間騰落率は-3.41%である。このファンドの資産配分は概ね次のようになっている。
 

※筆者作成

<資産配分>
国内債券65%、国内株式15%、先進国債券15%、先進国株式5%

新興国資産やREITを除いた4資産型のバランスファンドであり、全体の債券比率は8割に達する。国内債券比率も高く、非常に安定的な資産配分が、このような環境下において小さな下落率に留まった要因だろう。

3位……たわらノーロード バランス(堅実型) 期間騰落率:-3.40%

運用会社……アセットマネジメントOne
基準価額……1万570円
純資産総額……10.02億円
信託報酬……0.22%(税抜)

期間騰落率は-3.40%である。このファンドの資産配分は概ね次のようになっている。
 

※筆者作成

<資産配分>
国内債券36%、国内株式4%、先進国債券36%、先進国株式12%、新興国債券8%、新興国株式1%、国内REIT2%、海外REIT1%

8資産型のバランスファンドであるが、全体の債券比率は80%に達する。また、先進国株式、先進国債券の大半に為替ヘッジを掛けているのも特徴だ。非常に安定度の高いバランスファンドであると言えるだろう。

2位……DCニッセイワールドセレクトファンド(安定型) 期間騰落率:-1.59%

運用会社……ニッセイアセットマネジメント
基準価額……1万425円
純資産総額……43.83億円
信託報酬……0.14%(税抜)

期間騰落率は-1.59%である。このファンドの資産配分は概ね次のようになっている。
 

※筆者作成

<資産配分>
国内債券65%、国内株式5%、先進国債券25%、先進国株式5%

4資産型のバランスファンドであるが、全体の債券比率は90%と非常に高い割合となっている。債券は暴落時に強いということを体現したと言えよう。

1位……たわらノーロード 最適化バランス(保守型) 期間騰落率:-0.65%

運用会社……アセットマネジメントOne
基準価額……1万345円
純資産総額……0.16億円
信託報酬……0.50%(税抜)

期間騰落率は-0.65%である。このファンドの資産配分は概ね次のようになっている。
 

※筆者作成

<資産配分>
国内債券55%、国内株式5%、先進国債券32%、先進国株式2%、新興国債券6%

第1位となったのはアセットマネジメントOneの「たわらノーロード 最適化バランス(保守型)」だ。全体の債券比率は93%程度となり、一部資産には為替ヘッジも掛けている。安定重視の資産配分が、新型コロナショック下でも0.65%の下落に留まった要因だろう。

3.コロナ禍のつみたてNISA(積立NISA)のポートフォリオ変更は慎重に

新型コロナショック下でも下落率の小さかった、つみたてNISA対象のバランスファンド上位10銘柄を紹介してきた。どのファンドも債券比率が70%を超えており、上位のファンドには90%を超えるものもある。コロナショックのような相場暴落時には、債券比率の高い安定重視のバランスファンドのほうが騰落率を抑えられることがわかったはずだ。

つみたてNISAでは、基本的に株式型のインデックスファンドしか選択できないが、バランスファンドを活用すれば、債券比率を高めた暴落に強いポートフォリオを作成することも可能だ。

新型コロナウイルスの第二波懸念もあり、今後も予断を許さない市況が続くことが見込まれる。安定した資産運用をしたいという人も多いだろうが、ポートフォリオの変更は慎重に行いたい。ポートフォリオを安定的なものに変更した場合、暴落時の下落は抑えられるものの、相場回復時の戻り幅も限定されるからだ。

つみたてNISAは毎月定額の積立投資が原則であり、資産下落時には多くの口数を購入できるドル・コスト平均法の考え方がベースとなっている。安易にポートフォリオを変更した場合、今後の回復を享受できない可能性も出てくる。

もちろん、今回の暴落でもう少し安定的なポートフォリオを組んでおけばよかったという人も多いだろう。そうした場合には、少しずつ時期を分散しながら、今回のような債券比率の高い商品をポートフォリオに加えていくようにしたい。

 
執筆・樋口壮一

新卒で証券会社に入社後、10年間リテール営業、ホールセール営業を経験。現在は事業会社の営業企画部門に努める傍ら、個人として投資を行い、マーケットに携わる。  

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