目次
「聴覚」を司るのは「耳」だけではない

「聴覚」を司るのは「耳」だけではない

花はハチの音が聞こえると、一時的に「蜜を甘くしよう」とがんばる
(画像=花の蜜を吸う「ハチ」 / credit: pixabay,『ナゾロジー』より 引用)

蜜が甘くなればなるほど、花は多くの送粉者を惹きつけ、受粉のチャンスを増やすことができます。

実際に研究者たちはフィールドワークにおいて、他の送粉者が6分以内に訪れた花には、他の花と比べて9倍以上の送粉者が好んで集まっていることを確認しています。

また、多くの花がボウルのように「凹状」に咲いているのは、音波を受け取り、増幅しやすくするためであると考えられます。

それはちょうど、テレビのアンテナが電波をキャッチしやすいように凹状になっていることと同じ原理を利用しているといえます。

その構造の効率性を確認するために、研究チームは「花びら」を1枚~数枚取り除くといったテストをおこなっています。その結果、花びらを失った花は、低周波の音をうまく反響させることができませんでした。

研究チームの一員である Marine Veits 氏は、この「花の聴覚」のメカニズムについて、より詳細な研究を進めていきたいと語っています。それはたとえば、どのような分子や機械的なプロセスがそこに作用しているのか、などといったものです。

Veits 氏は、「どうやって植物が『聞く』ことや『匂う』ことができるの?と思う人もいるでしょう。そんな人々に、『聞く』という行為は『耳』によってのみ行われるわけではないことを知ってほしいと考えています」と語っています。

彼女はこの研究が、「世界の認識は、トラディショナルな感覚器官によってのみ行われる行為ではないことを証明する研究になってほしい」と願っているのです。

この記事は2019年1月に公開されたものを再編集しお送りしています。


参考文献

Flowers can hear buzzing bees—and it makes their nectar sweeter

元論文

Flowers respond to pollinator sound within minutes by increasing nectar sugar concentration.


提供元・ナゾロジー

【関連記事】
ウミウシに「セルフ斬首と胴体再生」の新行動を発見 生首から心臓まで再生できる(日本)
人間に必要な「1日の水分量」は、他の霊長類の半分だと判明! 森からの脱出に成功した要因か
深海の微生物は「自然に起こる水分解」からエネルギーを得ていた?! エイリアン発見につながる研究結果
「生体工学網膜」が失明治療に革命を起こす?
人工培養脳を「乳児の脳」まで生育することに成功