謎の正体はアメーバの分解能力にあった
研究者の直感したストーリーは、アメーバの持つ誘引物質の分解能力に基づくものでした。
アメーバは同じ濃度で満たされた分岐路に立たされた場合、両方の道に身体の一部を伸ばして、誘引物質を吸い取り、体内で分解していたのです。
こうすることで、正解の道からは新たな誘引物質が流れてきて吸収された分を補います。一方、行き止まりの道からの供給はストップします。
アメーバはこのわずかな誘引物質の供給状態の差を利用して、行き止まりを回避して正しい道に進んでいたのです。
このことは、アメーバは単に誘導物質の濃度勾配に引かれるだけでなく、岐路に立った時は自ら局所的な誘導物質の濃度勾配を生み出していたことを意味します。
また先頭集団が順調である一方で後方集団の動きが鈍かったのも、誘引物質を先頭集団が独り占めして他者に周らないように分解していたと考えられます。
単純なシステムではありますが、迷路攻略と生存競争の必勝法とも言えるものです。
シミュレーションによる再現
次に研究者は、アメーバの誘引物質の分解と、分岐路における決定メカニズムをシミュレーションに落とし込んでみました。
その結果、シミュレート世界のアメーバも先頭集団とその他に別れただけでなく、先頭集団は現実世界と同じように高い行き止まり回避能力を発揮し、複雑な迷路を最短で攻略しました。