日本も無関係ではいられない
冒頭でもお伝えしたとおり、私はこの流れは日本にとっても他人事ではないと考えている。日本もアメリカ同様、新型コロナによって自分の働き方を見直す機会が増えているからだ。
私自身、元同僚など知人のキャリア相談を受ける中で人々の悩みの傾向が変わってきたと感じる。今までは「どのようにキャリアアップするか?」というものが多かったが、コロナ以降は「自分はどういったキャリアや人生を歩むべきか?」という相談が増えてきた。
今まではどこかの組織に所属して順当にキャリアアップしていけばいいと考えていた人たちが、仕事と生活のバランスや人生そのものを見直し始めているのだ。
また、フリーランスや副業ワーカーといった新しい働き方を選ぶ人も増えている。新型コロナによって人生の不透明さが浮き彫りになり、多くの人が「思っていたほど会社は個々の人生に対して責任を持ってはくれない」と実感した。終身雇用の崩壊が加速していることも、この流れを後押しする。
最近は、エリートサラリーマンとしてキャリアを歩んできた人がフリーランスに転身したり、副業を始めたりするケースも増えている。また現在フリーランスとして活躍している人にどれだけ好条件で正社員のオファーを出しても、断られることもあるという。もはや企業の中で活躍する人生を「選択したくない」と感じる人も増えているのだ。
彼らに共通するのは、「自分のライフステージに合う働き方を柔軟に選択していきたい」という意思だ。誰もが週5日同じ場所に出勤し、朝から夜まで働く生活を10〜20年単位で続けられる保証はない。
子どもが生まれたり、親が病気になったり、パートナーの仕事が変わったり。人生は日々変化していくし、パンデミックで生活がガラリと変わることもある。そして未来は誰も予測できない。
人生のその時々において大切なものを優先し、かつ働きがいや面白さのある仕事をしていきたい。企業はこの先、そんなニーズに応えていける柔軟性と、従業員の気持ちの変化を読む力がますます必要になってくるだろう。逆に言えば、それを捉えて変わっていける企業は人に恵まれ、大きく成長することができるはずだ。
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岩井 エリカ
経営者。株式会社ソレクティブ CEO。日米で人事の経験を持つスタートアップ創業者。9歳から単身イギリス留学し、ロンドンのImperial College London工学部修士を卒業。人事としては、アメリカのUCLA Anderson School of ManagementでMBAを取得後、アメリカのメガベンチャーをはじめ複数企業での人事戦略や、世界最大の広告代理店WPPグループであるGeometry Ogilvy日本支部での人材マネジメント統括、フリーランスの人事コンサルタントを経験。自らの経験をもとに、フリーランスという働き方を通して日本の労働市場を変えたいという想いから2020年に株式会社ソレクティブ(Sollective)を設立。
編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2022年4月25日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。
文・シェアーズカフェ・オンライン/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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