読書は紙か、電子書籍か。

読書好きが一度は通るこの二択について、あらゆる観点から双方の魅力を比較検討します。読書体験のみで比べず、ライフスタイルや将来性にも焦点をあててみると、意外な魅力があることもわかりました。

読書家の皆さんの意見をまとめましたので、ぜひご参考ください。

目次
読書はオワコンではない? 出版市場の意外なデータ
【紙の本 vs 電子書籍】それぞれのメリット/デメリット
【紙の本 vs 電子書籍】それぞれのコスト比較
【紙の本 vs 電子書籍 vs 両方】それぞれの魅力を読書家さんに聞いてみた
自分に合った読書スタイルを考えよう

読書はオワコンではない? 出版市場の意外なデータ

【紙の本 vs 電子書籍 vs 両方】読書するならどのスタイル?
(画像=『Workship MAGAZINE』より 引用)

音声・動画コンテンツ市場の成長が目覚ましい昨今、「読書に使う時間は減りつつある」ともいわれています。しかし、出版市場のデータを見てみると、意外な結果が見えてきます。

『出版指標年報』(2021年版、公益社団法人 全国出版協会・出版科学研究所)のデータをもとに、紙の本と電子書籍の売れ行きや動向の一部を紹介します。

電子出版市場は過去5年で成長

2020年の電子出版市場は前年比28%増、過去5年を振り返っても市場規模を拡大し続けています。紙の本に対する市場の占有率も前年比24.3%増と、存在感を大きくする形となりました。

電子書籍の売上を支える主なジャンルは、電子コミック、ライトノベル、そしてビジネス書です。一方で、近年はこれまで電子書籍での出版がなかった人気作家の文芸作品が解禁されたり、各電子書籍ストアのオリジナルコンテンツがヒットしたりといった動きも見られ、電子書籍の楽しみ方がより広がりつつあると考えられます。

電子コミック市場の成長が電子書籍普及の一端に

電子コミック市場は、こうした電子出版市場を支える柱の一つです。2020年の電子コミック市場の成長は、前年比31.9%増と目覚ましい成長を遂げている領域です。『鬼滅の刃』をはじめとした人気コンテンツが売れていることに加え、韓国など他国で人気の作品を原作にしたコミカライズなども新たに楽しまれ始めています。

電子コミックに特化したプラットフォームでは、時間経過やキャンペーン対象のサービスを登録すれば、無料で作品の続きを読めるシステムが普及しました。また、お試し用に序盤の展開が無料公開されている作品も少なくありません。気軽に楽しめる作品数が増えたこともあり、電子コミックはさらに身近になったといえるでしょう。

紙の本も一部ジャンルの人気が高まる

対して、紙の本(書籍・雑誌合計)のニーズはどうでしょうか。紙の本の推定売上実績は97年以降減少を続けており、とくに月刊誌・週刊誌の売上減少がその大きな要因となってきました。しかし、2020年の紙の出版物(書籍・雑誌合計)の推定販売金額は、前年比1.0%減とこれまでよりはわずかな減少にとどまり、1兆2,237億円という結果が出ています。

内訳を見てみると、児童書や学参書が好調に転じ、それに続く形で文芸書やビジネス書の売上も伸びています。コロナ禍で休校やリモートワークがあったことで、読書による学びへのニーズが高まったためでしょう。

また、『鬼滅の刃』をはじめ、幅広い性別・年齢層を惹きつけるコンテンツが生まれたことも2020年の売上を支えたひとつの要因です。原作として強いヒットコンテンツが生まれると、紙の本を求めるユーザーが増えるようです。

紙の本と電子書籍はそれぞれ別途求められている可能性が高い

このようなデータから、紙の本と電子書籍は、それぞれ別のニーズを満たすために利用されていることがわかります。

読書家の方は「紙と電子書籍、どちらのほうがいいの?」と気になると思いますが、自身が好むジャンルや生活スタイルに応じて使い分けるほうが効果的ということです。

【紙の本 vs 電子書籍】それぞれのメリット/デメリット

では、紙の本と電子書籍には、それぞれどのような魅力があるのでしょうか。下記の一覧で特徴をまとめましたので、ご覧ください。

                   紙の本             電子書籍           
ラインナップ
※一部書籍は未対応
保管の利便性
他者への貸しやすさ
持ち運びやすさ
目への負担の軽さ
本を読むまでにかかる時間
本棚の一覧性
※ライブラリ機能あり
書き込み/付箋への対応
※一部デバイス・アプリは可
デバイス 不要 5,000~4万円
※スマホ、タブレットで併用可
価格(本1冊あたり)
※割引キャンペ―ン等あり

表内の補足がある部分を抜粋して解説します。

まずラインナップについては、今のところ電子書籍よりも紙の本が豊富です。とくに専門書や古書など特殊なジャンルの本は、電子書籍の発行が少ないです。一方で、トレンドのビジネス本や小説、コミックなどのジャンルについては、電子書籍でも十分網羅できます。

本棚の一覧性については、紙の本が本棚に並べられた状態で視認できる本の冊数を基準として考え、電子書籍の評価を「△」としました。一方で、電子書籍のライブラリには検索機能があるため、著者名やタイトルを把握している場合は本棚同様、あるいはそれよりスムーズに希望の本を見つけだすことができるでしょう。

本に直接メモを書き込む機能や、付箋を貼る機能は、電子書籍の一部デバイスにも存在しています。ただ、画面上での操作性と実際の本に対して行う場合の利便性を比べ、電子書籍を「△」としました。

デバイスや1冊あたりの価格については、次に詳しく説明します。