麻薬組織にとってアボガドも収入源となっている
アボガドが儲けになるとしてカルテルが目を付けたのは2013年頃であるという 。アボガドの生産業者を脅し、生産を妨害されたくないのであれば1ヘクタール当たり5万ペソ(28万円)を要求し始めたのである。それを拒否する農家に対しては彼らのアボガドの畑を燃やしたり家族を誘拐して殺害するといった行為に出ていた。
当初、ミチョアカンを支配していたカルテルはロス・カバリェロス・テンプラリオスだった。それが翌年2014年になるとそれに対抗して新たにカルテルのラ・ファミリア・ミチョアカンが登場してこの2つが縄張り争いをしていた。
2020年にはさらに2つのカルテルがそれに加わった。ロス・ビアグラとハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオンである。特に、ハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオンは狂暴なカルテルとして知られており、その成長は著しく、今ではメキシコでシナロアとテリトリーを2分するまでになっている。ハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオンのリーダーエル・メンチョはミチョアカン出身で小さい頃に家庭の生計を助けるのにアボガドの農園で働いていたということでアボガドには詳しい人物だ。
アボガドの生産農家は自衛団を結成
カルテルから利益を搾取されることに不満を持っている農家は自警団を形成するようになった。農園主の中には家族をカルテルによって殺害された人もいる。彼らは機関銃や防弾チョッキに身を包み、彼らの農園にカルテルのメンバーが入れないようにしている。その為にも国道の重要な拠点には見張りを置き、20人から60人がグループになって彼らの農園の周囲を巡回して監視している。
自警団が警戒を緩めると、その隙間をぬってカルテルがまた侵入するといったことが繰り替えされている。
メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領(以後、アムロ)は自警団の形成には反対している。彼らも守るのは警察や軍隊であるというのが理由だ。ところが、実際にはアムロが大統領に就任してカルテルとの平和的な解決を求めて寛大な対処をして来たものだから、それが逆にカルテルにとって勢力拡大の良い機会だと捉えて犯罪が過激化するようになっている。
1週間の輸出停止は5000万ドルの損出
ミチョアカン州から米国に向けアボガドの出荷は25年前から始められた。現在30万人の雇用が維持されている。今回は僅か1週間の輸出停止であったが、新鮮な果物だ。輸出が急遽停止されても他の市場を直ぐに探し見つけることはほぼ不可能である。ということで、仮に市場が見つかっても特価で販売するような状況に追い込まれた。そのようなことから今回の損出額は5000万ドルまでにのぼるとされている。
文・白石 和幸/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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