富裕層向けのハイステータスクレジットカード「ラグジュアリーカード」が会員を対象に実施した調査で興味深い結果が出ている。そこから垣間見える“富裕層の生活”のあらましをここで紹介しよう。

「ラグジュアリーカード」は富裕層向けのカード

「ラグジュアリーカード」はLUXURY CARD社が発行するハイステータスカードの総称で、同社のカード4種すべてがMasterCard最上位クラス“ワールドエリート”のランクに該当する。中でも2021年11月に発行開始された完全招待制の最上位ランク・ブラックダイヤモンドは入会金110万円(税込)、年会費66万円(税込)に設定され、超富裕層向けのカードとして話題を呼んだ。

この「ラグジュアリーカード」のブラックダイヤモンド以外の会員を対象に、2021年中のカード利用傾向を調査した統計がある。最上位ランクのカードこそ含まれていないが、富裕層を対象にして消費傾向を調べたものと考えていいだろう。

調査対象となった会員のうち92%が男性で、職種は「経営者・会社役員・自営業」が62%を占め、平均年収は1,700万円となっている。以下に紹介する調査結果はすべてラグジュアリーカード調べとなる。

コロナ禍で不動産や車を買う富裕層

まず、1人当たりのカード利用額は昨対比171%と大きく伸びている。これは、もともと高額決済時のカード利用が主体であったものが、長引くコロナ禍でキャッシュレス化が浸透し、日常的な利用が定着したためと見られている。

ただ、これは富裕層に限らず一般的な傾向でもあるはずだ。そこで、利用対象をカテゴリーに分け、もう少し詳細に消費傾向を見てみよう。

カテゴリー別の消費傾向

・「納税」昨対比530%
カードによる納税は昨対比530%と大幅アップ。やはりキャッシュレス化の影響と思われるが、アップ率の大きさは富裕層だけに納税額も大きいからだろう。「ラグジュアリーカード」は納税でもショッピング同様にポイントが貯まるため、複数カードを持つ場合でも優先的に利用されたものと思われる。

・「ソフトウェア、クラウドサービス、広告費等」昨対比230%
コロナ禍におけるリモートワークの普及に伴いビジネスにおけるデジタル化が進んだ結果、クラウドサービスなどの利用が進んだ結果と思われる。

・「不動産」昨対比178%、「ペット」昨対比160%、「ホームセンター」昨対比190%
リモートワーク用の別室を借りるほか、新築購入・土地購入などの利用が増えている。コロナ禍で家計に不安を覚える非富裕層とは異なり、富裕層は自宅で過ごす時間をより大切にするライフスタイルを指向し、そこへお金をかけているようだ。「ペット」「ホームセンター」の伸びも同様の理由だと思われる。

・「旅行代理店・ツアー」昨対比90%、「エアライン」昨対比57%、「国内宿泊」昨対比117%、「鉄道」昨対比121%、「車両購入」昨対比160%増、「百貨店」昨対比144%、「宝飾品・ギフト用品」昨対比160%、「レディースウェア」昨対比137%
コロナ禍による海外旅行の減少が「旅行代理店・ツアー」と「エアライン」の大幅減につながっている。しかし、その一方で国内旅行の増加から「国内宿泊」「鉄道」「車両購入」の利用が伸びている。「百貨店」「宝飾品・ギフト用品」「レディースウェア」の伸びも、海外旅行に使われていた分のお金が振り向けられた結果だろう。

いずれもコロナ禍による消費先の変化が反映された結果となっているが、非富裕層と違うのは、家計の不安から消費を控える方向へ行くのではなく、生活を豊かにしてくれることには惜しみなく消費するという点である。

キャンピングカーや高級時計を購入

ラグジュアリーカードでは2022年3月に会員約1,000名へのアンケート調査も行っている。2020年に比べて2021年の支出が増えたと回答した会員に対し、支出が増えた理由を聞いたところ、以下のような回答を得ている。

*テレワーク用のオフィスを借りた
*コロナ禍でキャンピングカーを購入した
*コロナ禍で色々我慢する代わりに趣味の車を購入した
*少しでも楽しみ増やすために、高級時計を購入した
*旅行等支出が減り代わりにハイジュエリーを購入した
*コロナになってからペットを飼い始めた
*ペットと一緒の時間が増えたのでおやつ代が増えた。散歩の回数が増えたのでトリミング代が増えた
*インフレ等を見越した資産保全の為、換金性のある現物資産を購入。また、衣類のネット購入が増えた

コロナ禍で行動が制限されるのは当然として、富裕層はそうした制限に縛られないところにお金を使い、このストレスフルな状況をうまく回避しているようだ。

また、最後の現物資産購入も、目先の生活費や通常の貯蓄で精いっぱいの人々とは違う、富裕層らしい使い道といえる。

コロナ禍を逆手にとりプライベートを豊かに

コロナ禍において支出のあり方が変化したのは誰しも同じだろう。ただ、こと富裕層においては、プライベートの空間や時間を豊かにするため、以前よりもお金を使うようになっているようだ。

この調査ではコロナ禍におけるお金の使い方に関してその価値観も聞いており、それによると半数以上の会員が「コロナの中でも自分の価値や人生の価値を高める特別な体験には積極的に投資したい」と回答したという。

金銭的余裕のある富裕層にとってはこのコロナ禍も、急ぎ足の人生をスローダウンして、自分自身に向き合う良い機会となっているのかもしれない。

モリソウイチロウ
執筆・モリソウイチロウ
「ZUU online」をはじめ、さまざまな金融・経済専門サイトに寄稿。特にクレジットカードに詳しく、専門サイトでの執筆も行っている。雑誌、書籍、テレビ、ラジオ、企業広報サイトなどに編集・ライターとして関わってきた経験を持つ。
「ZUU online」をはじめ、さまざまな金融・経済専門サイトに寄稿。特にクレジットカードに詳しく、専門サイトでの執筆も行っている。雑誌、書籍、テレビ、ラジオ、企業広報サイトなどに編集・ライターとして関わってきた経験を持つ。

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