黒坂岳央(くろさか たけを)です。
ネットには「AIやロボットに仕事を奪われてしまう!」とITに疎い中高年の憂いや不安の声が見られる。その一方で「最近の若者は常識がない。覇気がない」と上から目線で、彼らをマウントしにかかる姿を目にすることがある。

これは恐れるべき対象を見誤った姿勢に感じる。AIやロボットはむやみに忌避すべき対象ではないし、若者からは中高年が知らない多くを学びを得る対象と思うのだ。
若者は常に上の世代より優秀
傾向的に、いつの時代も後から生まれる若者は、常に上の世代より確実に優秀になる。詳しくは過去記事「なぜいつの時代でも若い世代は上の世代より優秀なのか?」でも書かせてもらったが、その理由を端的に言えば、若い世代は先端の優れたテクノロジーに、いきなり触れられる有利な立場にあるからだ。
筆者はかつて「MS-DOSは使えるようになったほうがいい」と目上の方から勧められたことがある。MS-DOSはトラブルが発生した時に頼りになる機能であり、PCを扱うすべてのユーザーが獲得しておくべき必須スキルだと教わった。だが、今の時代はOSが進化し、ネット上には豊富なトラブル対応のナレッジシェアリングがなされている。MS-DOSを基礎からしっかり学ぶ、この必要性はかつて程はないだろう。PCの黎明期世代の中には、MS-DOSをしっかり身につけた人もいる一方で、今の若者は時間的リソースを、MS-DOS以外の重要性の高いスキルに割り当てることができる。
経済学の世界においては、「道路、電気など基礎インフラが未整備な地域が、最先端技術の導入により一気に発展する」という現象が存在し、これを「リープフロッグ(カエル跳び)」と呼ぶ。筆者はこのリープフロッグが世代間のテクノロジーでも起こると考えている。世代間で触れられるテクノロジーの格差が、若者世代をリープフロッグさせることになるので、若者は常に上の世代より優秀になれる立場にあるのだ。
こうした立場的優位性に加えて、若者は時間的にも立場的にも、リスク許容度は中高年世代より高い。会社で役職を持ち、子供を数人抱える中高年より、独身でバイタリティ溢れる若者の方が挑戦しやすい立場にあるわけだ。
イノベーションを起こすのは若者、バカ者、よそ者
言い尽くされた表現ではあるが、「イノベーションを起こすのは若者、バカ者、よそ者」と言われる。確かにそうだ。
我々はまさしく、現在進行系でそのことを肌身に染みて実感しているはずだ。新型コロナという「よそ者」の襲来により、本来は長い時間をかけて浸透していく予定だったテクノロジーを、いきなり受け入れざるを得なくなった。世界的なリモートワークもその一つだ。そして、新型コロナに対応しうる技術やイノベーションを創出する中心人物は、高齢者世代より若者世代だ。
中高年世代が「仕事を奪われる」と恐れるイノベーションの泉は若者が開拓し、湧き出させているものである。彼らが恐れるAIやロボットも、天から降ってくるのではなく人間の手によって作られる創造物であることを忘れてはならない。その創造主の主役は若者だ。