アメリカ人は生涯で約6ヵ月間を信号待ちの時間に費やすという話があります。では、信号密度がアメリカの16倍にもなる日本では一体どれだけの時間を信号待ちに費やすことになるのでしょうか。
信号の切り換わるタイミングさえわかれば、速度調節をすることで信号待ちの時間が減らせます。そして現在は、信号に引っかからない速度を自動で提示してくれる機能を誰でも利用することができます。
それがTSPS(信号情報活用運転支援システム)と呼ばれる仕組みです。どのようなものなのでしょうか。
運転ストレスの原因? 信号大国日本
日本は世界トップクラスの信号大国です。信号機は全国に207,738機あり、信号密度はイギリスの5倍、アメリカの16倍にものぼります。信号が多い都道府県TOP3は1位が東京で15,772機、2位が愛知で13,307機、3位は北海道で13,058機です。
都市部では1時間あたりの走行のうち22分が赤信号待ちであり、実際の走行距離はわずか15kmとのこと。以上は、2017年に登場した日産 ノート e-POWERのCMで引用されたデータであり、信号ストレスが運転中の注意散漫を誘発するとも語られています。
国土交通省の調べによると、都市部の渋滞は2001年時点で年間約38.1億時間の時間損失を発生させており、それによる経済損失は12兆円にものぼるそうです。
その後進められたITS(高度道路交通システム)推進によって信号機が適切に制御され改善されてはいるものの、渋滞の完全解消には至ってはいません。
しかし、現在の道路はITSのさまざまな機能が渋滞緩和のために見えないところで機能しています。そのひとつが、先にある信号の状態をドライバーに伝えるTSPSと呼ばれる仕組みです。
事前に信号の状態がわかる「TSPS」
都市部の信号機は、通行する車両の位置や速度などの情報を使って渋滞を極力抑えるように切り換わりタイミングが制御されています。その情報を利用し、車両およびドライバー側に働きかけて円滑な交通を促す仕組みがTSPSです。
TSPSはTraffic Signal Prediction Systemsの略称であり「信号情報活用運転支援システム」と訳されます。トヨタやレクサス、ホンダの一部車両には標準でTSPSが搭載されています。
TSPSは道路上の路側機から信号の切替情報を取得し、メーター表示や音声によってドライバーに伝えます。
TSPS搭載車では、赤信号で停まると信号の待ち時間を表示してくれる「発進遅れ防止支援」や、信号に引っ掛かるのを回避するためにアクセルオフや速度指示をしてくれる「信号通過支援」「赤信号減速支援」などの機能が無料で利用可能です。
これにより、信号に引っ掛かる頻度を抑えてドライバーのストレスを緩和することに加え、ムダな加速や減速、信号待ちでのアイドリングを抑制することで燃料消費量やCO2の削減に貢献します。TSPSを搭載した車両が増えれば渋滞緩和も期待できます。