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音楽院開設や指揮者への未来に向かうために“今”を積み重ねる
自分へのご褒美で買った【ライカ】が醸す、独特の詩情が好き

音楽院開設や指揮者への未来に向かうために“今”を積み重ねる

「ツアーのあいまに手にするカメラで切り取る、なにげない風景に心をほどく」|ピアニスト・反田恭平
(画像=『男の隠れ家デジタル』より引用)

日本に戻ればコンサートが開かれ、アルバムデビューも果たした。しかしロシアの音楽院での日々はなかなかに苛酷だったようだ。当初はロシア語は話せないし、冬は極寒の地で寮ではお湯も出ない。練習室は少なくてなかなか確保出来ない上、ピアノも壊れていたりする。

「だから夜、学校に忍び込んで練習したりもしました」

1年後には外国人向けの予備科で首席(1位)になって本科へ。ロシアでは3年半勉強し、現在はポーランドで学んでいる。

その後の活躍は、いまや誰もが知るところだ。

ショパン国際ピアノコンクールは、30歳以下という年齢制限がある。1994年生まれの反田さんにとっては次のチャンスはない。体幹を支える筋肉を鍛え、次には音の深みをもたらす脂肪をつけた。髪型も、海外の人に“サムライ”を印象づけるよう長髪をひとつにくくった。もちろん、表現と技術をより深化させていったことは言うまでもない。

大切なことをうかがった。

緻密なプランを重ねてこのコンクールで上位入賞を目指したのは、一ピアニストとしての評価を望んでのことだけではないのだ。

反田さんは以前から、いくつもの夢を温めている。

まず、日本の音楽教育を変えていくこと。海外の指導を経験し、日本の高等音楽教育には楽しさを教えることが抜けていると感じている。

「小さい頃の楽しさを失うことなくプロとしてやっていける音楽家を育成できるような、日本初の音楽院を作りたいんです」

また、力のある若手音楽家に道を拓き、同時にクラシックの素晴らしさを広く伝えること。ジャパン・インターナショナル・オーケストラを編成し、株式会社化してきたのも、ファンと音楽家をつなぐネット上のサロン「Solistiade」の運営も担ってきているのもその一環である。

そして、指揮者になること。

「小学6年の時に参加したワークショップで、オーケストラを前に指揮棒を振らせてもらいました。その感覚は忘れられません。指揮台に立ち、全身で音楽を浴びたい。今は日本でもウィーンでも指揮の勉強をしています」

そうした夢を確実なものにするためには、上位入賞者として世界に知られることが必要だったのだ。その覚悟の大きさに、息を呑む。

自分へのご褒美で買った【ライカ】が醸す、独特の詩情が好き

「ツアーのあいまに手にするカメラで切り取る、なにげない風景に心をほどく」|ピアニスト・反田恭平
(画像=『男の隠れ家デジタル』より引用)

そんな反田さんの愛着の品は、音楽に関連するものかと想像していたのだが全く違った。カメラである。ライカSL2-Sに24-90㎜のレンズ。専用のケースから取り出されたそれはずっしりと重い。ほとんどプロ仕様の品である。

「もともと一眼レフカメラが好きで、ニコンを使っていました。軽くて撮りやすくて、海外でもよく持ち歩いていたんです」

取材を受ける機会が増えるうちに興味が一層増していた時、あるカメラマンに「ライカのレンズはすごくいいんだよ」と聞いた。実際、その人が撮った画像の雰囲気も好みだった。けれど、調べてみるとレンズだけでも70万円近くする。

「めちゃくちゃ高いですよね。だいぶ迷ったんですが、自分へのご褒美かなと。買ったのは2021年3月30日でした。趣味にこんなお金を使ったの初めてですよ」

「ツアーのあいまに手にするカメラで切り取る、なにげない風景に心をほどく」|ピアニスト・反田恭平
(画像=『男の隠れ家デジタル』より引用)

撮るのは花や景色、動物などさまざま。

「やはり、これで撮ると何か違うんです。どこか詩的というか、この独特の雰囲気こそライカの魅力ですよね。ほら、覗いてみて」

うながされてファインダーに目を当てると、確かに風景が柔らかく美しく見える。

「こうして覗いているだけで、なんだか自分が映画の一場面にいるような感じがするんですよ」

撮った作を見せていただくと、なかなかの腕前。インスタグラムなどに上げるほか、ご自身のCDのジャケットにも使っているそうだ。

「趣味にしてはいい感じの写真になっているでしょう? 自己満足かも知れないんですけれど。最近はこれで撮るほか、一周回って、年に数回は『チェキ』や『写るンです』とかの独特の味わいも楽しんでいます」

「ツアーのあいまに手にするカメラで切り取る、なにげない風景に心をほどく」|ピアニスト・反田恭平
(画像=『男の隠れ家デジタル』より引用)

たっぷりとお話をうかがった後、撮影のためピアノの前に座っていただいた。すると反田さんの手は鍵盤に向かう。その指先から突如、ショパンが、リストが、シューベルトが、キラキラとあふれ出す。その場を満たしていく音の華やぎは、からだ全部を染めていくようだ。なんて楽しそうに弾く人だろう。演奏は止まらない。耳の幸せとしか言いようもない。反田さんが言う“誰かに喜んでもらうために”という“原点”を思う。

「コンクールのファイナルの曲はあれからずっと弾いていなくて、最近やっと弾いたんですよ。そしたらすごく良くなっていた。本選までの苦しみを経て、自分の中に完全に入った感じがします」

反田さんが見ている未来の風景は、私たちには計り知れない。けれど、その繊細な感性のいくばくかは、愛用のライカで撮った写真から伝わるだろうか。

■反田さんが撮影した写真作品

「ツアーのあいまに手にするカメラで切り取る、なにげない風景に心をほどく」|ピアニスト・反田恭平
(画像=『男の隠れ家デジタル』より引用)
「ツアーのあいまに手にするカメラで切り取る、なにげない風景に心をほどく」|ピアニスト・反田恭平
(画像=『男の隠れ家デジタル』より引用)
「ツアーのあいまに手にするカメラで切り取る、なにげない風景に心をほどく」|ピアニスト・反田恭平
(画像=『男の隠れ家デジタル』より引用)
【反田恭平さんの愛用品】

■ライカSL2-S+バリオ・エルマリートSL f2.8-4/24-90㎜ASPH

「ツアーのあいまに手にするカメラで切り取る、なにげない風景に心をほどく」|ピアニスト・反田恭平
(画像=『男の隠れ家デジタル』より引用)

ライカのレンズに惹かれて購入。合わせて150万円ほどしたが、画質の独特の詩情感にはとても満足している。持ち重りする感覚も好みだ。でも常に気軽に持ち歩けるような重量ではない。

「だからこれは“今日は撮るぞ”の日用。ツアーに出る時も、専用バッグをオケトラに載せて持っていきます」

【取材協力】
スタインウェイ&サンズ東京

「ツアーのあいまに手にするカメラで切り取る、なにげない風景に心をほどく」|ピアニスト・反田恭平
(画像=『男の隠れ家デジタル』より引用)

東京都港区北青山3-4-3 ののあおやま 1F

文/秋川ゆか 撮影/田村 巴

提供元・男の隠れ家デジタル

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