目次
■旅するように巡ることができるのが、低山の魅力
■自分らしい低山トレッキングの見つけ方
■低山トレッキングのルールや注意点

山といえば、標高の高い山に登ってこそと思いがちだが、実は低い山のほうがバラエティに富んだ楽しみがある。「低山には、自分らしい山の楽しみ方ができる要素がたくさんある」と話す、低山トラベラーの大内征さんに低山トレッキングの魅力を聞いた。

■旅するように巡ることができるのが、低山の魅力

標高が低い山だからこそ楽しめる登山の魅力とは? 低山トレッキングのはじめ方
(画像=東京都・御岳山の奥に位置する大岳山で見かけた狛オオカミ。低山に色濃く残る信仰の証しだ、『男の隠れ家デジタル』より 引用)

登山といえば、日本アルプスや日本百名山に代表されるような高い山への登頂が思い浮かぶ。しかし、そうした遠くにある標高の高い山への登山だけでなく、あえて身近にある低山に登ることが注目されている。そこでまず気になるのが、低山とはどんな山を指すかということ。大内さんの回答は?

「実は厳密な定義はありませんが、僕なりには標高1000m以下で、人の暮らしが残っている山域を『低山』と位置付けています。たとえば植物の垂直分布を参考にすると、だいたい500mくらいが低山域とされていて、500~1500mくらいを山地帯、1500~2500mあたりを亜高山帯、2500m以上を高山帯としています。よく知られている深田久弥さんの日本百名山の基準は(例外が2座ありますが)標高1,500mでした。その基準からこぼれる標高1500m未満と考えることもできます。それらを踏まえて、だいたい1000m以下かなあ、というのを1つの指標にしています。その高さには人が暮らしてきた歴史や文化、営みが残っている。旅するように巡ることができるのが、低山の魅力です」(大内征さん、以下同)

低山を定義したことで、山の見え方が少し変わってきた。なるほど、低山とは標高が低いからこそ、暮らしに根付いた要素が転がっていそうだ。そのあたりが低山の魅力なのだろうか?

「そうなんです。低山は人の暮らしと結びついているぶん、家屋や神社などの跡があったり、諸説ありの言い伝えや文化などがあったりして、高山域にはない要素があります。ですから、登山と自分が興味のあるいろんな要素を組み合わせて楽しめるのです。歴史や神話、巨石、日本酒、食べ物、天体、マンガの聖地と何でもいい。低山を登りながら、さまざまな発見をして見聞を広めて、土地にあるものを吸収すると、自分が向上する。期待以上にグレードアップして帰って来られるのが、低山の良さだと思います」

■自分らしい低山トレッキングの見つけ方

標高が低い山だからこそ楽しめる登山の魅力とは? 低山トレッキングのはじめ方
(画像=山ごはんにこだわるのも、自分らしい低山トレッキングを楽しむ方法のひとつ、『男の隠れ家デジタル』より 引用)

いろいろな要素と組み合わせることで、魅力が広がる低山トレッキング。どんなふうにして、自分の低山トレッキングのスタイルを見つければよいのかを聞いた。

「自分が関心のあるテーマを山に持っていくのが良いと思います。山にある巨石や巨木と自然崇拝、地質や地形の謎、一度には覚えきれない植物のことでもいいですし、コーヒーでも温泉でも、山をモチーフにした美術でも、あるいは低山から海を眺めるでも。山ごはん目的の人もたくさんいますし、野鳥を追ってここまで来たというような人もいます。他人から見ると、“なぜ、君をそうさせる!?“というような、あなたならではの偏愛が大切だと思うんです」

では、実際に東京近郊の低山には、どのような山があるかを紹介してもらった。

「東京の青梅市にある御岳山(みたけさん)は、多摩川の上流にある山です。道に迷ったヤマトタケル(日本武尊)を助けたオオカミが神様として山を守っています。そのため、山頂に狛犬ではなく“狛オオカミ”が祀られています。多摩川の下流にあたる府中や世田谷、川崎にはオオカミ信仰のお札がたくさんありますが、その信仰の源流として御岳山に注目するのも面白いですね」

低山トレッキングのテーマが先に決まらなかった人も、出かければ自然と見つかりそうだ。身近な低山は住むエリアの知らなかったことを知る機会でもある。自分の住む地域の再発見にもつながるだろう。