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「団長」という存在
感染者について

「団長」という存在

私がPCR検査を待つ間に、団地の共同購入で一昨日購入したお米が届いたと「団長」からの知らせが来た。

政府の配給を待っていられないため、住民は共同購入という方法を見つけたのである。生活物資の在庫はいくらてもあるが、配達員不足でそれを住民に届けることは出来ないという状況下において、物流システムが完備されてない地方都市で流行った共同購入が上海ロックダウン中に大活躍した。

複数人によって2,000~3,000元分をまとめ買いし、配達員が届けてくれる。大体40~70人から注文を集めれば、注文は成功する。共同購入するお店をの検索や、注文したい住民の集計、代金の管理等においても「団長」が活躍。個別注文で買えない以上、団地の共同購入が唯一の救い手となり、「上海団長」もホットワードとして話題に上がった。

ロックダウン日記、上海で何が起きているか
(画像=▲wechatグループでの共同購入の様子、『チャイトピ!』より引用)

私は米がもうすぐなくなることを心配し、お米の共同購入に参加。2日後、そのお米が届いたことを団長がグループに通知した。

お米が届いた時間がPCR検査の時間と重なり、ボランティアの人らはPCR検査の仕事に回っているため、それを配る人がいない状況であった(住民が1,000人を超える団地には私のような臨時的なボランティアを含めても10数人しかない)。

そこで、あるおばさんが団地のエントランスに置かれた米を持っていこうとしたようだ。食べ物がなくなる生存危機の状況下では、人は道徳を簡単に失うのだと思った。

ロックダウン日記、上海で何が起きているか
(画像=▲団地の住民が共同購入した米、『チャイトピ!』より引用)

感染者が出たアパートに住む人は外出が禁止されていたため、私はPCR検査を終えたら、米の配布を手伝えると団長に連絡。その後、私はガードさんから台車を借りて外出が禁止された受取人のアパートの入り口まで米を運んだ。

この時、チャットグループで空っぽの冷蔵庫の写真と一緒に「どうか助けてください」と訴えていたおじさんが「米をくれないか」と質問した。どうやらおじさんは共同購入の仕組みを理解していなかったため、今回のお米の受取人リストに彼の名前は載っていないようだ。それを知らずに米の代金をグループに送ったおじさんを見かねて、団長が自ら購入した10kgのお米をおじさんに譲った。

私がボランティアの仕事を行った日は、家に着く頃にはもう日が暮れており、すぐにでもシャワー浴びて寝たい気持ちであった。

防護服を着たまま家に入った際、シェアハウスのルームメイトに「ウイルスが服についているかもしれないから、しっかり消毒してから入って」と注意され、私はこの時初めて自分がコロナウイルスに対して麻痺していることに気がついた。

感染者について

団地で初めて感染者が出てから、その感染者および濃厚接触者が収容する場所に搬送されたのは6日後のことだ。その間、住民が政府のクレーム受付ページに書き込み、110番に通報するなど、感染者が隔離搬送されてないことに不満を寄せた。

どうやら感染者数の急増で収容する場所が足りず、収容までに時間を要したようだ。

ネットでは、工事がまだ終えてない新築の収容所に運ばれている姿が公開されており、さらに過労で倒れた医者を元気そうな感染者4人が担いで運んでいる動画を見ると、今の医療リソースではこれだけの感染者を直ちに隔離・治療することには限界があると感じた。

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上海は2020年のコロナ第1波から、有力なコロナ対策をとり、「優等生」と呼ばれていた。当時、私の勤務先でも一時的に在宅勤務を余儀なくされたが、生活面では特に問題はなく、フードデリバリーも宅配も普段と特に代わりのないように届いていた。

今回のオミクロン株は、重傷率は低いが感染力が強い。中国政府は「ウィズコロナ」ではなく、総人口の多さから犠牲者も多く出てしまうことを懸念し「ゼロコロナ」を堅持してきた。上海もそれに追従し、感染者数の激増によりロックダウンを決断。4ヶ月前に西安市の封鎖期間に起きた食料調達難がまさか上海でも発生するとは、誰も思わなかったであろう。

なぜこのようなことになったのか、中国EC大手京東のCEOである徐雷氏のこの言葉が参考になる。

「政府部門はサプライチェーンへの理解が足りない。環境衛生、公安など公共サービスや、国有企業、商品供給するブランドがあれば市民生活を保障できるわけではない。サプライチェーン上の重要な点が一つでも分断したら、全てが終わる。商品は倉庫にあり、野菜は土地にあるのだ」。

封鎖中、物流会社の上海倉庫は営業を停止。近くの別の倉庫からトラックで商品を運送するには運転手のPCR検査証明だけでなく、政府が発行する通行証が必要だ。様々な条件をクリアして無事市内に貨物を届けられるトラックは限られている。

世論を受け上海市政府は、ようやく一部の物流企業の営業を許可したが、復活する目処はまだ立っていない。1日も早く物流が正常化し、ロックダウンが解除されることを祈っている。

提供・チャイトピ!

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