近年、長期的・安定的に家賃収入が得られる不動産投資が人気を集めています。しかし、マンションなど特定の物件に直接投資するのはそれなりの資金が必要、もしくは勤務先の信用力がないとローン審査が通らず、始めたくても始められないという場合もあります。
そこで注目したいのが、少額からの投資が可能な「不動産投資ファンド」です。今回は、「不動産投資ファンド」の仕組みやメリットについて解説します。
目次
不動産投資ファンドの仕組みは
不動産投資ファンドの種類
・不動産投資信託(REIT)
・不動産特定共同事業
不動産投資ファンドの仕組みは
「ファンド」とは、投資家から集めた資金を運用し、得られた収益を投資家に分配する仕組みを指しますが、「不動産投資ファンド」は、たくさんの投資家から集めた資金をオフィスビルや商業施設などさまざまな「不動産」に投資し、それらの賃料収入および売却益などで得た収益を投資家に分配する仕組みや組織のこと。
投資対象の不動産として挙げられるのは、ホテル、商業施設、住宅、オフィスビル、物流施設、介護・医療施設など多岐にわたり、これらを組み合わせて運用されています。
収益の種類は、資産を保有中に得られる収益(主に家賃収入)の「インカムゲイン」と、資産価値の上昇や不動産売却によって得られる売却益の「キャピタルゲイン」の2種類があります。
不動産投資ファンドの種類
不動産投資ファンドには、「不動産投資信託」と「不動産特定共同事業」の2種類があります。
不動産投資信託(REIT)
不動産投資信託は、「投資信託及び投資法人に関する法律」に基づいて運用される投資のこと。アメリカ発の金融商品の1つ「Real Estate Investment Trust」の略で、「REIT(リート)」とも呼ばれますが、日本では頭にJAPANの「J」をつけて「J-REIT」と呼ばれています。
不動産投資信託の特徴として、「不動産の所有権は投資家ではないこと」「複数の不動産へ分散して投資すること」「一定条件(収益の90%以上を分配するなど)を満たせば法人税が非課税となり、収益の大部分が投資家に分配されること」などが挙げられます。
オフィスビルや商業施設、マンションなど複数の不動産などを購入し、その賃貸収入や売買益を投資家に分配する商品です。
また、不動産投資信託は資金の集め方により、大きく「公募」と「私募」の2つに分けられます。私募は基本的に機関投資家が対象となるため、個人で投資できるのは公募だと認識しておくと良いでしょう。次から、それぞれについて詳しく解説します。
公募商品(J-REIT)
公募ファンドは、広く一般に投資者を募集するファンドのこと。証券会社や銀行、保険会社などで扱われ、不特定多数の個人投資家に販売されるもの。
投資金額は最小で数万円程度となり、初心者には挑戦しやすい投資です。また、公募ファンドは証券取引所に上場しているため、株式投資と同じように経済などの影響によって価額が変動するなど流動性が高く、換金しやすいことも特徴です。
限定的な募集(私募REIT、私募ファンド)
私募REITは、事業法人や機関投資家など、一部の投資家を対象に販売される私的なファンドのこと。証券取引所に上場していないため、個人投資家が自由には購入はできません。運用期間に定めはないですが、公募ファンドとは異なり投資額は億単位と高額になります。流動性も低くなるのが特徴です。
私募ファンドも私募REITと同様、特定の少数の投資家を対象としています。運用期間は3〜7年などと決まっていて中途解約ができず、終了時に不動産市場がよくない時期だと不動産の価格が下がるのでその影響を受けるリスクがあります。
REITや私募J-REITと異なり、私募ファンドの法根拠は「商法、会社法、資産の流動化に関する法律、不動産特定共同事業法」などに基づいて運用されます。公募REITに比べると換金しづらく、流動性も低くなるのが特徴です。投資額は私募REITよりも高く数億円〜数百億円単位とさらに高額になります。
不動産特定共同事業
不動産特定共同事業は、「不動産特定共同事業法」に基づいて運営される小口の不動産投資のことです。同法は1995年4月に施行のあと2013年に大きな改正があり、2017年の法改正により小規模不動産特定共同事業が創設され、投資家の出資額の上限が100万円までと決められましたが、地方の空き家や空き店舗の再生などをも視野に入れた、より幅広い不動産に対しての投資を促すような動きとなっています。同年の改定によって、クラウドファンディングに対応した環境整備もされました。
不動産投資信託との大きな違いとしては、不動産投資信託は金融庁の管轄となりますが、不動産特定共同事業は国土交通省の管轄であることです。
不動産特定共同事業、小規模不動産特定共同事業には次の第1号事業から第4号までの事業があります。
第1号事業の契約形態には次の2種類があります。
匿名組合型
匿名組合型は、投資家が匿名組合に資金を出資する方法です。匿名組合型では、事業者と投資家で「匿名組合契約」を結びます。そして組合が出資金で不動産を取得し、管理・運営を行うことで得られた収益を投資者へ分配するのです。この分配金は「雑所得」として扱われます。また、不動産の所有権は事業者となるため、登記に投資家の名前は記載されず、登記にかかる費用を負担する必要もありません。
任意組合型
任意組合型は、複数の投資家で不動産を所有し、それを組合に現物出資する方法。投資家と事業者は「任意組合契約」を結び、組合が投資家に代わり不動産の管理・運営を行い、得られた家賃収入などの収益を投資家へ分配する仕組みです。投資の規模は、匿名組合型に比べると出資額が多くなります。この分配金は相続税対策にもなる「不動産所得」となります。この方法では不動産の所有権は投資家にあるため、登記のための費用は投資家が負担することとなります。