岸田首相の踏み込み方

岸田首相の世論調査における支持率が就任以降、あまり崩れていないと評されています。ポリシーなき政治ゆえに岸田色がないから、と揶揄する声もあります。それはさておき、対ロシアへの姿勢はかなり鮮明で厳しい策を次々と打ち出しています。今回個人的にも驚いたのが石炭輸禁、外交官追放です。強硬ですが、基本的に欧米に足並みをそろえたものです。日本独自のものでありません。G7の一国としての使命感なのでしょう。特に林外相が参加したNATO会議で中国を名指し批判しましたが、はっきり見えるのはアジアにおける外交のリーダーシップと明白な路線づくりかと思います。
イアンブレマー氏はGゼロの社会の到来を予言します。私もそう考えています。つまりバラバラの社会です。ただ、現在だけみれば日本は戦争リスクを抱えているため、欧米の傘に入ることが戦略的に不可欠とみます。憲法解釈でぐずぐずしている間に世の中はすっかり変わりつつります。あの共産党の志位委員長の自衛隊必要発言はなぜ飛び出したのか、時代の変化だとみるべきでしょう。もちろん、夏の選挙対策もあります。
長年努力した日ロ関係は振り出しに戻ります。ロシアとは会話すらしにくくなります。北方領土問題は50年はお預けでしょう。ロシアも黙っていません。その時日本政府は「不本意、不当、遺憾」と他人事のようなコメントが意味をなさないことを肝に銘じるべきです。石炭のみならず、石油ガスの代替はたやすくありません。争奪戦です。となれば原発の再稼働議論も避けて通れません。つまり岸田氏はロシア締め付けに対するマイナス効果に対するプラスの提供が必要なのです。プラスマイナスゼロになる施策を出せますか?肝がそこまで座っていますか?岸田氏の手腕が試されます。
後記
フランスの大統領選ががぜん注目となっています。選挙活動をほとんどしなかったマクロン氏に対して戦法を変えて「脱悪魔」化した極右のルペン氏が1%ポイントの差に詰め寄っており、決戦投票は確実の情勢です。ルペン氏が圧倒的な追い上げで勝敗の行方は予想困難となっています。マクロン氏楽勝説すらあったのに今や、危機感を募らせているというのですから選挙は水物です。もしもルペン氏が大統領になれば欧州の政局は大きく変わります。それがウクライナ問題にも驚くほど波及するのは目に見えています。世の中、本当に先が見えにくくなっています。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年4月9日の記事より転載させていただきました。
文・岡本 裕明/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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