コンサルタントの基本的な仕事は選択と集中の優先決め
で、コンサルタントの話に戻ります。クライアントはやりたいことや希望がたくさんあるのでそれを並行して全部やることはできません。戦争で言うなら全面的に戦線を拡大しても勝てるのは相手の数倍、数十倍の戦力がある場合に限ります。こちらはランチェスターの法則と言って近代戦では生き残る兵士の数まで計算式で表せます。
本もたくさん出ています。
SoftBankなら市場を制圧するために500億とかぶっ込んでくるので全面的な正面戦争が可能ですが、我が日本軍もかつては戦線をバカみたいに拡大して自滅しました。

当時の人口とGDPと兵力でこんなに広い範囲をカバーできるはずがない。
企業も同様でオーナー社長が数十億、数百億を即断で動かせるなら広がりきった前線も余裕ですが、普通はこうはいかないからコンサルタントが費用対効率や、スケジュール、期待値から施策の優先順位と採用、不採用を進言します。わたしもコンサルしてて経営者が自分の思うとおりにしかしない場合はすぐに降りるのですが、コンサルタントを入れる意味がありません。
きちんとしたコンサルタントは成功例の引き出しをたくさんもっているので当てはめることが可能なのです。こうして限られたリソースをいかに有効に使うかを考えて成功の確率を少しでも上げるようにします。
ここらは経験のない似非コンサルタントにはできないと思います。彼らの引き出しは空っぽです。情報商材屋さんでコンサルを名乗っているのも同様です。
選択と集中の具体例をコロナ対策に当てはめると
ここからはオマケです。
仮に国家に無尽蔵の資産があり(石油が死ぬほど出るとか)何十年も国民が働かなくても国家が養えるのであれば、何ヶ月か試しにロックダウンしてみるというのもあり得る選択ですが日本では数兆円をドブに捨てるのと同じになり、あり得ないでしょう。

何度も言っていますが、日本では160人の失業者が増えると自殺が1人増えて景気が回復するまで続きます。

バブル崩壊の時は自殺の純増は10万人で行方不明はその数倍。で、いまは雇用助成金が出ているので失業率は2.9%でこらえていますが、多くのサービス業が廃業においこまれている今、このまま緊急事態宣言を続けていたらどうなるかは明らかです。
で、仮にコンサルティングファームがコロナ対策を提言するとすると、費用対効果と時間から優先順位を割り出します。次の波はおそらく11月。それまでにやったほうがいい優先順位をつけるわけです。
考えられる具体的な対策は
(1)ハイリスク群へのワクチン接種の徹底により重症者数を減少させる
(2)医療体制を充実して初期治療で重症化を防ぐ
(3)緊急事態宣言は本当に効果があるのかきちんと評価し本当に効果のある対策を制定する
ということになると思いますが、これのメリットデメリットを分類します。
まず次の波までには2ヶ月しかないことを考慮して一番すぐにできるのは間違いなく(1)です。コストも時間もかからない。

このように15~20%くらいのハイリスク群には頑としてワクチンを受けないという人がいます。そもそも重症者の中に2割しか女性はいないので主にオッサンと言えるでしょう。男性のほうが肥満率、喫煙率ともに女性よりずっと高いのが要因と考えられます。


50歳代以下は58人で29%だった。ワクチン効果で高齢者の死亡が抑制されたとみられ、50歳代の死者で2回のワクチン接種を終えていた人はいなかった。
ワクチンの重症化防止効果は以下のようです。ワクチン未接種の死亡率の全年代合計は若者が中心になるので実質的に若い世代の致死率となるため非常に低くなっていますので、接種率が高い年代で見ないとダメです。55歳以下はワクチン2回接種で致死率は0になりました。
70代 1.68%→1.03%
80代 5.42%→2.03%
と半減しました。

このように明確なわけですのでハイリスク群の接種が終わって十分に抗体が維持できれば重症者は激減して医療崩壊を叫ばなくても済みます。もちろん時間が経過して抗体が下がってきている高齢者のブーストも含みます。
問題は日本ではワクチンはあくまでも自由ですので中国のように強制的に接種できません。またそうするべきではありません。民間にも強制できないのであり得るとしたら「公共機関や交通機関、施設利用を利用する50代以上の男性はワクチン接種済みか24時間以内の陰性証明が必要」という程度くらいです。とはいっても交通機関は電車は物理的にチェック不可能なので航空機や船舶にならざるを得ないでしょう。ただし民間でも客が安心するのは確かにあるのでそういう飲食店やサービス業は同調するケースが必ず増えます。接種済みと非接種で二分化されるはずです。
現実的にはワクチンを打って抗体値が高いうちは感染防止効果もそこそこあります。
ワクチン接種2回後の感染、未接種者の13分の1
しかし、時間が経過したら感染防御機能は落ちてきますので、ワクチンパスポートは感染防止の観点からはそれほど意味はありません。意味があるとすると「面倒だからワクチン打とうかな」というハイリスク層の意識の変化に期待するだけです。フランスなどワクチンパスポートを設定して接種率が上がった国も多いです。
この手法はすぐにできてコストもかからず効果はそこそこ期待できます。「東京から田舎に帰省するな」と言われた単身赴任の相談には「ワクチン2回接種済み」のTシャツを着て堂々と帰りなさいと言っています。これだと田舎も文句の付けようがない。ワクチンパスポートの一種とも言えます。
医療体制については当然やるべきことではあります。が、1年半近く経過していまだに多少程度しか改善されておらず病床をひとつ確保するのに月に1500万も払う状況では、かかるコストも莫大です。時間と費用対効果を考えると並行してすすめるにせよこれだけを邁進しても11月には間に合わないと思います。
3番目の政治的な手法についても同様で、国民の8割が効果のないロックダウンを希望しているという末期的な状況では、それを押しきるのは管さんの例を見ても支持率が低下して政権が破綻する可能性があります。単純に5類に落とせば解決というのは季節性インフルと同等の致死率と死亡率(10万人安あたりの死者)になってはじめてできることで、40代以上のワクチンが終われば季節性インフルエンザと同等の0.1%程度には落ちると考えられるので、やっと来年の2月に見直す事が可能になります。
と、こんな感じで官邸にコンサル会社がはいると(アメリカではがっつり入っている模様)、命題の切り分けと優先度、それにともなうコスト。施策については呂リットとデメリットを試算します。たとえばロックダウンして10人の命が助かるとするとロックダウンで2兆円のマイナスになるなら一人助けるのに2000億円というクールに試算もします。
大企業はほとんどのケースで大手のコンサルティング会社からチームが入っていて、施策の立案や事業設計を行っています。チームで3ヶ月で数千万くらいのギャラは普通でして、逆に言えばそれ以上の利益を叩き出す可能性は高いと言うこと。
元アクセンチュアの仕事仲間に「アクセンチュアの人がかならず読む本はなに」って聞いたらまっさきにこれを挙げてきました。
編集部より:この記事は永江一石氏のブログ「More Access,More Fun!」2021年9月10日の記事より転載させていただきました。
文・永江 一石/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
【関連記事】
・「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
・大人の発達障害検査をしに行った時の話
・反原発国はオーストリアに続け?
・SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
・強迫的に縁起をかついではいませんか?