上手な失敗と下手な失敗
世の中には上手な失敗と、下手な失敗がある。歳を取ってから大きな挑戦をする場合は、失敗に慣れていないと、再起不能なダメージを負うことになりかねない。
上手な失敗とは、身を持ち崩さない程度のスモールサイズの挑戦だ。たとえば、起業に際して手元の10万円、20万円を使って、会社に勤めながら傍らで週末起業的に挑戦するものなどがあげられる。万が一、失敗をしても、会社員を続けているならそれほど人生は変わらない。10万、20万円の資金なら、たとえ失ってもまた稼ぎ直せる金額である。筆者も何度も色んなビジネスで起業を試み、最初はことごとく失敗し続けた。だが、会社員を続けていたことと、少額で挑戦していたことで大きな問題にはならなかった。ノウハウと経験を蓄え、なんとか経営者として生計を立てられている。
また、若者は年長者と比べて、持っている資金は限定的だ。人生のやり直しができないような、大きな失敗や多額の借金をしての挑戦などはやりたくてもできない。意図せず、命綱を付けられているような状態である。時間はあるから、失った資金は稼ぎ直せばよいし、ノウハウや経験は貯まる。
一方でそれなりに社会的地位や、資金を持っている中高年が失敗の仕方を知らずに挑戦をすると、まさしく再起不能に追い込まれかねない。筆者の知っている経営者に、ビジネスで大きく稼いだ人物がいる。ある時、彼は人の勧めで人生で初めての投資に手を出した。彼は持っていた5,000万円の資金を捻出し、時間や銘柄などを分散せず、リスキーな銘柄を一気に購入してしまった。その後は元本割れに陥り、5,000万円全額が塩漬け状態になってしまったのだ。初めての投資であったために、「スモールスタートで、経験と技術を磨く」という挑戦への考え方を知らなかったので、いきなり全力でアクセルを踏んでしまい、結果的に手痛いダメージを被ることとなったのだ。
挑戦は若い内にしておいたほうがいい。それは肉体的、知能的な優位性からというより、社会的、時間的な優位性からである。失敗は許されるうちに経験しておくことを勧めたい。
文・黒坂 岳央/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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