長嶋茂雄記念球場に関する「政局否決」と市民の不利益

佐倉市は、長嶋茂雄氏の生家があり、氏が佐倉高校出身でもある関係で、既存の球場を建て直すにあたり、2013年氏の名前を冠した球場としてリニューアルすることとなりました。

恥ずかしい佐倉市議会⑪:権力の固定化と市民の不利益
(画像=広報佐倉:2013年8月1日号記事、『アゴラ 言論プラットフォーム』より 引用)

日本のプロ野球に多大なる功績を残した長嶋氏の名に恥じぬ球場とすべく、国からも約7億円もの交付金が内定し、市の予算とあわせ総額約16億7000万円の予算が2015年に組まれましたが、さくら会や公明党などの議会多数派が主導して、当予算を「根こそぎ否決」する修正動議を可決してしまったために、予算が0円となってしまった。結果、当然ですが国からの約7億円の交付金は取り消されてしまう。なお、「予算0円」とする修正動議に賛成した議員は、現在も12名が現役議員として活動しています。

恥ずかしい佐倉市議会⑪:権力の固定化と市民の不利益
(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より 引用)

上の賛否表で、「修正案①」に「〇」をしている議員は、当予算を「0円」にした議員たちです。

当球場の建て替え事業は、否決された翌年の2016年、総額約6億6500万円という大幅な縮小予算が議会で認められました。そのため、座席、擁壁、チケット販売所等の設備を大幅に削り、プロ野球の公式試合もできない「長嶋茂雄記念球場」が、佐倉市にできてしまいました。

総額6億6500万円を認めるのならば、国からの交付金7億円を足せば少なくとも13億6500万円の球場はできたはずですが、2015年に上程された予算を「0円」にしたために、確定していた国の交付金約7億円を、議会が全額蹴ってしまった。交付金を7億円無駄にしたという意味では、今回の4億2500万円どころではありません。国としても、長嶋氏の功績を顕彰する目的で予算を立てたわけですから、この交付金には国家の意思も入っています。このような結果になるのであれば、そもそも長嶋氏の名前を冠した球場を、佐倉市に作るべきではなかったのです。

このように、「市民・国民そっちのけ」で、政局のみに明け暮れる議会の振る舞いによる悲惨な結末は、佐倉市民のみならず日本国民にとっての損失であり、佐倉市の恥と言えるでしょう。

さて、佐倉市では現在も、先のとおり28分の18の「圧倒的多数」が議決権を握っています。前の市長時代に議会に延々と嫌がらせをうけたトラウマもある佐倉市執行部には、「さくら会連合体」に対する恐怖が植え付けられている。

一般論として、このような構造になった場合、行政は「議会多数派」を特別扱いせざるをえなくなります。そうなると、議会多数派は自分たちの票田となる会社や団体の便宜をはかるため、行政に対して無理な注文をするようになると言われています。いわゆる「政治が行政を捻じ曲げる」という状況です。

また、そうなると議会多数派の中で特に実権を握る議員は、行政の人事に介入したり、気に入らない入札結果となった場合に議案を否決したりすることができるようになります。佐倉市でも、そのような「不可解な議案の否決」が、過去発生しています。

他方で、自分たちの利権とは関係のない議案については、基本的に「行政に寄り添った議決」をします。自分たちの思う通りに動いてくれる市長はこの上なく「便利な存在」ですから、不祥事などが発生しても、議会では極力穏便に「市民に気づかれないよう」済ませる運営をします。

次回の原稿では、以上の背景をもとに、今回佐倉市で発生した「コロナ交付金の繰越事務の不手際による4億2500万円の損失事案」の佐倉市議会における扱いを確認します。

文・高橋 富人/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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