スポーツシューズ、ウェアを手掛けるアシックス(兵庫県/代表取締役社長COO 廣田康人)の一ブランドとして、今や世界中に顧客を抱えるオニツカタイガー。競合が多くひしめく中、日本発のファッションブランドとして全世界に160店舗を構える。2002年以降売上は右肩上がりで、コロナ禍ではECサイトでの販売も伸ばした。オニツカタイガーの強さはどこにあるのか。
スポーツシューズブランドからの脱却 海外売上構成は85%

10年ほど前から、パルコやルミネといったターミナル駅にあるファッションビルに『オニツカタイガー』の売場が出現し始めた。現在、表参道にある旗艦店を筆頭に、全国のトレンド発信地に35店舗を構える。
スポーツシューズブランドのパイオニアとして1949年に誕生し、斬新なアイデアと技術を取り入れながら1977年まで進化を続けたオニツカタイガー。同年に3社合併によりアシックスが誕生後、「オニツカタイガー」ブランドもアシックスに統合され、その名前は長らく消えていた。
その「オニツカタイガー」が復活を遂げたのは、2002年。当時、アシックスヨーロッパの社長であった尾山基氏(現 代表取締役会長CEO)が、ヨーロッパにおけるレトロファッションの流行の兆しに目をつけたのが始まりだった。レトロスニーカー人気に乗って、オニツカタイガーは見事ファッションアイテムとして復刻。現在では、幅広い世代に認知されるファッションブランドに成長している。
さらに、映画「キル・ビル」で、主演女優のユマ・サーマンが『TAI-CHI』というシリーズの黄色いシューズを履いたことから、おしゃれなアイテムとしてメディアで広く取り上げられることになった。ミラノファッションウィーク、東京コレクションなどのファッションイベントに次々と参加し、ファッショナブルなイメージを一気に加速させたのである。
2002年の復活劇から20年、オニツカタイガーは右肩上がりの成長を続ける。2021年第3四半期の売上実績は、対前年同期比19.5%増の303億円に達した。国内でも十分な存在感があるが、欧米、アジアを中心に全世界で160店舗を構え、現在海外での売上が85%を占める。欧州から復刻版の展開を始め、欧米での人気の広がりを受けて、日本でもブランド戦略を強化していった。
高品質のものづくり、機能性、デザインの掛け合わせ

競合がひしめくファッション業界において、グローバルに好調を維持している強さの秘密は何なのか。
「品質を追求したものづくりに魅力を感じてもらっている。国境、性別、世代を超えてご愛用いただいており、TOP30に入るラインはどの国でも同じように売れている。歩きやすく、毎日はいても痛みにくい機能性が一番の特徴で、定番モデルが全体の4割から5割を占める。そこに、トレンドを意識したデザインのプロダクトも継続的に出すことによって、流行に敏感な女性客からも支持されるようになった」と、オニツカタイガーカンパニー コマーシャル部 営業推進チーム マネージャーの鹿目健氏は話す。
「たとえば、ブランドを象徴する『MEXICO 66』というモデルの場合、基本はオニツカタイガーストライプが入っている薄底仕様。そのスタイルは維持しながらも、ストライプがないタイプ、厚底、スリッポンというように、ファッションアイテム色が強い商品もラインナップに揃えている」(同)。
また復刻当初から、シューズカテゴリーフロアではなくファッションフロアへの出店を続けたことで、女性客への認知が着実に上がっていった。現在は女性比率が6割にのぼる。