ここ数年に渡り、夏になると中国の浜に押し寄せる緑色の「藻」。環境汚染が原因と目されていますが、しかし実はこの藻、我々が日頃からよく食べるアレだったのです。

中国の浜に大量の藻

中国・山東省の中心都市のひとつで、ビールの製造で広く知られる青島市。この街の沖あいで、今や「毎夏恒例」となった現象が発生しています。

その現象とは、大量の「藻」が押し寄せるというもの。観測されるのは今年で実に15年連続です。藻の発生面積は約60,594平方kmに達しており、これは日本の東北地方の総面積に近いといいます。

中国の浜を埋め尽くす不気味な藻 正体は日本人の大好きな「青のり」?
海岸の岩に生えた「藻」(提供:PhotoAC)(画像=『TSURINEWS』より 引用)

年々「藻」の発生量は増加しており、青島沖では昨年と比べて9倍、これまでで最悪だった2013年と比べても2.3倍に広がっているそうです。この赤潮ならぬ「緑潮」は全国的に有名で、一面グリーンの海が「映える」として撮影に訪れたり、大量の藻の中を泳いだりする市民もいるとのことです。(『まるで「美しき死の世界」 中国・青島市で大量の緑藻が発生』東方新報 2021.7.18)

この藻は何者か

この大量発生した「藻」は、海藻の1グループである「緑藻」の一種、アオサ属の「スジアオノリ」とその近縁種であると考えられています。実は日本でも、水質汚濁が進んだ1970年代以降に、アオサ類の大量発生が起こったことがあります。

アオサはそれ自体は無毒な海藻ですが、大量発生すると呼吸や腐敗に寄って水中の酸素を使い尽くしてしまったり、また大量に海面に浮くことで海中に届く太陽光をさえぎってしまうため、海洋生物の大量死をもたらすことがあります。更に、アオサが海岸に打ち上げられると悪臭を発し、漁業や観光にも悪影響を与えます。

中国の浜を埋め尽くす不気味な藻 正体は日本人の大好きな「青のり」?
スジアオノリ(提供:PhotoAC)(画像=『TSURINEWS』より 引用)

青島におけるアオサの大量発生の原因としては、浅瀬でのノリの養殖拡大や水質汚染などが考えられています。地元企業は、大量発生したアオサの脱水、圧縮、加工をして約500種類の有機肥料を製造し、野菜や果物、園芸などに転用するなど、新たな活用法の開発に取り組んでいるそうです。

またこのアオサから「健康によい糖」として知られるオリゴ糖を生産することや、アオサの腐敗によって発生するメタンガスを使ったエネルギーステーション構想もあり、今後の実用化に期待が集まっています。