リーマン予想と「素数」の深い関係

では、リーマン予想と素数との関わりを見てみましょう。 そこには、次のような和が関わっています。

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正の整数の s 乗の逆数を順番に足し続けるという、とてもシンプルな和です。実 は、この和が「素数全体」と関わっているのです。オイラー(1707 年-1783 年)と いう数学者が次のような等式を発見しました。

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下(右辺)では、1-{1/(素数のs乗)}の逆数を掛け続けています。つまり、右辺は不規則に出現する謎の存在「素数全体」に関する積です。一方、上(左辺)は、きれいに 並んだ「正の整数全体」に関する和です。

「きれいに並んだもの全体」と「不規則 なもの全体」が繋がり合っている不思議さが見えてきます。

実は、これこそが、リーマン予想に登場する「リーマンゼータ関数 ζ(s)」の正体 です。

< リーマンゼータ関数 >

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先ほどの等式とともに、ζ(s) の姿を眺めてみると、「リーマンゼータ関数 ζ(s)」と「素数全体」が深く関わっているであろうことが見えてくると思います。

さらに、もう少しだけ、このリーマンゼータ関数の不思議な一面を紹介したいと思います。

例えば、s=2 の場合

・・・=

となるのです。「平方数の逆数を足し続けると、円周率が出現する」というのは、 とても不思議に感じます。この等式もオイラーが証明したもので、「バーゼル問題」という名前で知られています。

また、リーマンゼータ関数については、数学書において、次のように言及されています。

ζ関数は、非常に簡単に構成できるにもかかわらず、容易にはその神秘を明か してはくれない難しい対象でもある。しかしながら、その奥底に閉ざされた真実 を1 つでも見つけることができたならば、思いも依らない深遠な関係をまた1 つ解明できると常に確信していてよいだろう。(J. ノイキルヒ「代数的整数論」)

数千年もの時を経て研究され続ける素数。その一つの転機は、18世紀にオイラーが見出した業績でした。それらを、19世紀にリーマンが受け継ぎ、 リーマン予想がこの世に現れたのです。

そして、2020年現在も、リーマン予想や素数をめぐる研究は行われ続けています。さらに今、素数は、情報セキュリティと密接に関わり、インターネットの時代を生きる私たちの生活になくてはならないものとなりました。

リーマン予想の持つ背景を調べれば調べるほど、数千年にもわたる数学研究から織りなされる深遠さに驚かされます。

ここで紹介したものは、 その深遠さの上澄みのほんの一部分です。ぜひ、文献などで、リーマン予想の深遠さの続きをお楽しみください。

【編集注 2020.07.26 21:00】
記事内容に一部誤りがあったため、修正して再送しております。 reference:黒川信重(著)「リーマン予想の今, そして解決への展望」, J. ノイキルヒ(著)「代数的整数論」 , 加藤和也(著)「数論への招待」 / written by みのきち

提供元・ナゾロジー

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