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リーマン予想とは何なのか?
リーマン予想に欠かせない「素数」を知る

解けたら1億円!? ミレニアム懸賞問題とは : 「リーマン予想」を解説
(画像=credit:depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

もしも、数学の問題を一問解いて、お金がもらえるとしたら、あなたはどう感じますか?「数学は嫌いだけれど、お金がもらえるなら頑張れるかも」なんて思うかもしれません。

実は、「一問解けば、お金がもらえる数学の問題」があるんです。しかも、その額は 100 万ドルで、日本円に換算すると 1億円以上。

そんな夢のような問題は「ミレニアム懸賞問題」という名前で知られており、2020年現在、計6問の未解決問題が存在しています(元々は7問ありましたが、そのうち一問は既に解かれてしまいました)。

数学の問題をたった一問解くだけで1億円。今回は、そんな夢のような問題の一つである「リーマン予想」の背景を探っていこうと思います。

リーマン予想とは何なのか?

解けたら1億円!? ミレニアム懸賞問題とは : 「リーマン予想」を解説
(画像=ベルンハルト・リーマン / credit:public domain, wiki、『ナゾロジー』より引用)

まずは、この「1 億円問題」であるリーマン予想の姿を見てみましょう。

リーマンゼータ関数の非自明な零点の実部は

である。

一つ一つの言葉は確かに難しそうですが、一行にも満たないシンプルな文章に驚かされます。ドラマの「ガリレオ」に出てくるような、難しい数式がズラズラと 並んでいるわけでもなく、出てくる数字も「

」のみ。このとてもシンプルな文章が、超難問なのです。

リーマン予想は、その名の通り、ベルンハルト・リーマン(1826年-1866 年)という数学者が打ち出した予想です。

非常に業績の多い数学者で、リーマン積分、リーマン幾何学、 リーマン多様体など、彼の名を冠する数学用語が多いことから、そのスゴさを知ることができます。

リーマン予想が提出されたのは1859年。今から約160年前で、日本はまだ江戸時代でした。1859 年と2020年現在を比較すると、科学は格段に進歩していて、スーパーコンピュータのような、凄まじい計算能力を持ったマシンも出現しています。しかし、リー マン予想は未解決のままなのです。

リーマン予想に欠かせない「素数」を知る

解けたら1億円!? ミレニアム懸賞問題とは : 「リーマン予想」を解説
(画像=credit:depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

160年モノの難問であるリーマン予想は、「素数」という存在と強く関わっています。素数というのは「1 より大きい整数で、1 と自分自身以外に約数を持たないもの」のことです。例えば、2,3,5,7 は素数ですが、6 は 6 = 2 × 3 となり、2と3を約数に持ってしまうので、素数ではありません。

正の整数は、素数の積で表現することができます。これを素因数分解と言います。

< 素因数分解の例 >

12=2×2×3=22 ×3

360=2×2×2×3×3×5=23 ×32 ×5

素因数分解を眺めていると、素数が「元素」のように見えてきます。

例えば、水が二つの水素と一つの酸素からできているように、12は二つの2と一つの3からできています。

「素数のことなんて調べても、何の役に立つの?」と思う方もいるかもしれませ ん。

実は現在、素数は私たちの生活の必需品になっています。インターネット上 で情報を安全にやりとりするための「暗号」という技術に素数が使われているのです。

例えば、RSA 暗号では、とても大きな素数p, qを 2 つ掛け合わせて、Nという数をつくります(N = p × q)。「N がわかっていても、そこから素数p, qを簡単に求められない」つまり「N を簡単に素因数分解できない」ということを背景にし て、RSA 暗号の安全性は保たれています。

21世紀の情報セキュリティに必須な存在となっている素数ですが、その研究は、 遥か昔、紀元前には始まっていました。紀元前300年頃に書かれたユークリッド の「原論」という本に、素数は無限に存在することの証明が書かれています。

それだけ長い期間、研究され続けているにも関わらず、素数は未だに謎だらけの存在なのです。例えば、素数同様、正の偶数も無限に存在していますが、

2 , 4 , 6 , 8 , 10 , 12 , 14 , 16 , 18 , 20 , 22 , 24 , 26 , 28 , 30 , 32 , 34 ,···

という風に規則的に並んでいます。しかし、素数はどうでしょうか?

2 , 3 , 5 , 7 , 11 , 13 , 17 , 19 , 23 , 29 , 31 , 37, 41 , 43 , 47 , 53 , 59 , 61 , 67 , 71 ,···

ここまで見ても、偶数のような規則性は見えてきません。「5 と 7」、「11 と 13」、「17 と 19」など、2しか離れていないものもあれば、23と29になると、6も離れています。もっと先の素数まで見ると、1327の次の素数は1361 で、34も離れています。しかし、さらに先の1427の次の素数は1429で、2しか離れていません。この2しか離れていない素数のセットは双子素数と呼ばれており、「双子素数は無限に存在するのか?」というのも未解決問題なのです。

リーマン予想は、明確な規則性の見えてこない素数の「分布」に関わっています。

つまり、「正の整数の中で、どのように素数が出現するのか?」についてのヒントを与えてくれるのです。リーマン予想が、素数の謎に一筋の光を与えてくれると 言っても良いかもしれません。