取材用防弾チョッキを送る
ほかに具体的にできることはないのか?
会場から立ち上がったのが、「国境なき記者団」ポーランド支部の女性ジャーナリスト。「私が知っている数人のジャーナリストがウクライナで亡くなった」。
これ以上の犠牲者を出さないためにも、「私たちは取材用防弾チョッキをウクライナのジャーナリストに送るプロジェクトを始めている」。
防弾チョッキは1着が1000ユーロ(約13万円)に上るという。チョッキを買うための資金も集めている。「これまでに30着をウクライナ西部リビウに送ったが、さらに数百着必要だ」。
ウクライナ侵攻直後に国外に出たジャーナリスト、イリーナさんも声を上げた。
「ウクライナにいたときは、ジャーナリストの研修を担当していた。戦場取材のスキルを学ぶ研修を提供しているという話があったが、心理面の影響も忘れないでほしい。戦時取材は、ジャーナリストの心身への影響が大きい」。
また、ジャーナリストの死を世界のメディアが報じるとき、ウクライナにやってきた著名な外国人ジャーナリストばかりではなく、現地ウクライナで外国人ジャーナリストを助けた「調整役」の人物の存在を同様に重視して報道してほしい、と訴えた。
そんな地元調整役の一人が、オレクサンドラ・サシャ・クシノバ氏だった。彼女は米フォックスニュースのジャーナリスト、ピエール・ザクレジウスキー氏(同時に死亡)を助けるために働いていた。享年24歳。
ツイッターでは、ヨーナット・フリリング氏がサシャさんの死を悼むツイートを発信した。

国境なき記者団」の調べによると、ウクライナ侵攻の2月24日から3月25日までの間に、少なくとも5人のジャーナリストが亡くなっている(3月26日付のウェブサイトから)。

上の地図はウクライナで砲撃によって亡くなったあるいは負傷したジャーナリストを示す。赤丸と「Killed」が亡くなった場所を指す。サイトから、地図上にカーソルを当てると情報が示される。
ロシア人ジャーナリストに今の状況を聞く
最終セッションの後、ロシアの民間ラジオ局の男性ジャーナリストに、状況を聞いてみた。モスクワから来たという。
「言えないことがどんどん多くなっている。いつまで自分がロシアにいられるかは分からない」。
西側諸国による経済制裁で、市民の生活はどうなっているのか。
「自分自身は生活面ではなんとか大丈夫だ」。
市民はロシア国内のみで使えるカードと国際決済が可能なカードの2種類を持っていることが多いという。国際決済の方のカードは使えないが、国内カードは使えているという(3月18日時点)。
「本当に、この先どうなるのか、まったくわからない」。
編集部より:この記事は、在英ジャーナリスト小林恭子氏のブログ「英国メディア・ウオッチ」2022年3月27日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「英国メディア・ウオッチ」をご覧ください。
文・小林 恭子/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
【関連記事】
・「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
・大人の発達障害検査をしに行った時の話
・反原発国はオーストリアに続け?
・SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
・強迫的に縁起をかついではいませんか?