社会保険料の企業負担が増えた

次の図のように企業の人件費は、2009年のリーマン危機で大きく下がったあと増えたが、手取り給与は2014年から減った。その差は社会保険料の企業負担である。社会保険料の負担は労使で折半することになっているが、企業はそのぶん手取りの賃金を下げるのだ。

賃金を上げるには社会保険料の引き上げを凍結すべきだ
(画像=人件費と給与(2000年=100)出所:家計調査(総務省)、『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

2003年から今年までに、社会保険料は6.6%上がった。これは同じ時期の消費税の増税額の2倍以上である。年金保険料は18.3%で止まったが、健康保険料などは今後も上がり、社会保険料の総額は現在の約30%から2013年には約35%になる(次の図の負担率合計は所得控除が抜けているので不正確だが)。

賃金を上げるには社会保険料の引き上げを凍結すべきだ
(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

企業が今後2年間で5%賃上げしたとしても、その賃金原資はすべて社会保険料の企業負担になり、労働者の手取りは変わらない。

だから岸田政権が手取り賃金を増やしたいのなら、社会保険料の引き上げを凍結すべきだ。これは厚労省令でいいので、閣議決定だけでできる。需要不足の今やるべきなのは、無原則なバラマキではなく、これからますます重くなる社会保障負担の軽減である。

文・池田 信夫/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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