不動産投資では、始める際と所有し続ける間に税金が発生します。不動産投資を始めたあとで知ることのないよう、しっかりと把握しておきましょう。今回は所有し続ける間は課税される固定資産税についてみていきます。

目次
そもそも固定資産税とは?
 ・誰が支払う税金なのか?
 ・固定資産税とあわせて徴収される都市計画税
支払額の計算方法とシミュレーション
 ・固定資産税の計算方法
 ・固定資産税のシミュレーション

そもそも固定資産税とは?

固定資産税とは、土地や建物などの固定資産を所有している人に課せられる税金のことです。自身が住んでいない投資用物件であっても、不動産を所有している間は毎年支払わなければなりません。広義の固定資産税には狭義の固定資産税及び都市計画税が含まれます。

誰が支払う税金なのか?

固定資産税は、毎年1月1日時点で固定資産を所有している人に納税義務が生じる地方税です。1年のうちに物件の所有者が変わった場合には、日割り計算して前の所有者と次の所有者の間で精算するのが一般的です。

支払い時期は、年4回の分割払いか一括払いかが選べ、支払期限は送られてくる納税通知書に記載されています。市町村の条例で納付の時期が定められるので詳細は各自治体のホームページなどを確認してください。ちなみに東京都23区の場合、令和2年度の納期限は第1期が6月30日、第2期が9月30日、第3期が12月28日、第4期は翌年3月1日となっています。期限日が土・日・祝日と重なる場合は基本的に翌平日が期限となります。

地方税法 第三百六十二条(固定資産税の納期)
固定資産税の納期は、四月、七月、十二月及び二月中において、当該市町村の条例で定める。但し、特別の事情がある場合においては、これと異なる納期を定めることができる。
引用:地方税法

支払い方法で最も一般的なのは、現金で支払う方法です。市区役所や町村役場の窓口、指定の金融機関ほか、コンビニで支払いができます。自治体によってはクレジットカード払いも可能です。また東京都では、2020年6月1日からPayPay、LINE Payでの支払いも可能になりました。口座振替にも対応しています。市町村により支払い可能な方法が異なるので、市町村のホームページなどで確認しておきましょう。

固定資産税とあわせて徴収される都市計画税

土地や建物を所有すると、固定資産税とともに都市計画税という税金もかかります。都市計画税とは、都市計画事業など都市整備などの費用に充てることを目的にした税金です。

毎年1月1日時点での市街化区域内の土地や建物の所有者に対して、固定資産税とあわせて課税されます。

支払額の計算方法とシミュレーション

固定資産税の計算方法

広義の固定資産税は、以下の計算式で求めることができます。

固定資産税 = 固定資産税課税標準額(土地・建物)× 1.4%(標準税率)
都市計画税 = 都市計画税課税標準額(土地・建物)× 0.3%(標準税率)

課税標準額とは税金がかかる課税対象となる金額のことです。土地や建物の価格がそのまま課税標準額になるわけではなく、土地や建物の価値は別に定められます。次の通りです。

その資産の本来の価値を適正に反映した価格のことを固定資産税評価額といいます。その価格を求める方法は、土地は売買実例価額を基準として評価する方法、建物は再建築費(価格)を基準として評価する方法で価格を求めます(減点補正も実施)。価格を求めるには、総務大臣が定めた固定資産評価基準に基づいて評価します。そして評価された額を市町村長(東京都の場合は都知事)が決定し、固定資産課税台帳に登録したものをいいます。

評価額はその土地や建物に変化がなければ3年間価格は据え置かれます。3年に1度見直すことを「評価替え」といいます(前回の評価替えはH30年度でしたので令和3年度が評価替え基準年度となります)。

住宅用地には課税標準の特例措置が設けられており、税負担が軽減されています。住宅用地の特例措置を適用した額(本則課税標準額)は、住宅用地の区分、固定資産税及び都市計画税に応じて下表のとおり算出されます。

区分固定資産税都市計画税
小規模住宅用地住宅用地で住宅1戸※1につき200m2までの部分価格※2×1/6価格×1/3
一般住宅用地小規模住宅用地以外の住宅用地価格×1/3価格×2/3

※1)住宅の戸数は、原則1棟を1戸としますが、共同住宅の一室など、居住のために独立的に区画された部分が複数ある場合はその数
※2)価格とは、総務大臣が定めた固定資産評価基準に基づいて評価された額を知事又は市町村長が決定し、固定資産課税台帳に登録されたもの。つまり固定資産税評価額のこと

不動産所得については、給与所得等をまとめた総合課税の所得税として、納める金額を納税者が計算して確定申告によって支払う、申告納税という方法で支払います。一方の固定資産税は、国や地方公共団体があらかじめ金額を計算して、納税者に納税額を通知するという賦課課税(ふかかぜい)という方法で支払います。例えば住宅ローン減税のように、申告しないと減税にならないということではありません。

固定資産税のシミュレーション

それでは、固定資産税のシミュレーションを行ってみましょう。

1. 新築物件を購入した場合

例:新築時に土地および建物の固定資産税評価額がそれぞれ1,800万円の、都内の40m2(200m2以下です)のマンションを投資用に購入した場合

特例措置が加わった固定資産税の計算式は以下のとおり。

課税標準額 × 1.4%(標準税率)= 固定資産税

課税標準額は、土地と建物で次のようになります。

【土地】

  • 狭義の固定資産税
    1,800万円(固定資産税評価額)×1/6(特例措置)= 300万円(課税標準額)
    300万円 × 1.4%= 4万2,000円(固定資産税)
  • 都市計画税
    1,800万円(固定資産税評価額)× 1/3(特例措置)= 600万円(課税標準額)
    600万円 × 0.3% = 1万8,000円(都市計画税)

広義の土地固定資産税合計 6万円

【建物】

  • 狭義の固定資産税
    1,800万円(固定資産税評価額がここでは課税標準額※)× 1.4% = 25万2,000円
    25万2,000円 ×1/2(新築住宅の減額)= 12万6,000円(固定資産税)
  • 都市計画税
    1,800万円(課税標準額)× 0.3% = 5万4,000円
    5万4,000円 × 1/2 = 2万7,000円

広義の建物固定資産税合計 15万3,000円

土地と建物の合計の広義の固定資産税(都市計画税を含む)は、21万3,000円となります。

マンションが新築で、かつ床面積が賃貸用住宅の場合は40m2以上、自宅用は50m2以上の場合、固定資産税が5年間2分の1に減額される減額措置があります。

※建物(家屋)は基本、固定資産税評価額が課税標準額となります。

2. 築15年の物件を購入した場合

例:土地および建物の固定資産税課税標準額が600万円と500万円の、都内の40m2のマンションを投資用に購入した場合

中古マンションの購入では、評価の時点において新築するとした場合に必要となる建築費(再建築価格)を出し、経年により損耗した状況に対して減点補正等を行います。

税額は、土地と建物で次のようになります。

【土地】

  • 固定資産税
    600万円(固定資産税課税標準額)× 1.4% = 8万4,000円
  • 都市計画税
    600万円(固定資産税課税標準額)× 0.3% = 1万8,000円

広義の土地固定資産税額合計 10万2,000円

【建物】

  • 固定資産税
    500万円(固定資産税評価額)× 1.4% = 7万円(固定資産税)
  • 都市計画税
    500万円 × 0.3% = 1万5,000円

広義の建物固定資産税 8万5,000円

土地と建物の合計の広義の固定資産税は、18万7,000円となります。

固定資産税は中古住宅の場合には、新築で購入した場合に比べて家屋の減税措置がありませんが、不動産評価額が低くなるため固定資産税の金額は新築のときに比べて低めに出ます。

3. 築21年の物件を購入した場合

経年減価補正率が0.5を下回れば、新築時の優遇措置による減額分(固定資産税が2分の1に減額)より低くなるため、新築時に比べて固定資産税は安くなります。都内マンションの場合は、築20年の経年減価補正率が0.5054、築21年の場合が0.4820と、築20年を超えるタイミングで経年減価補正率が0.5を下回ります。