金融庁による「老後資金2,000万円」の報告書や、「退職後30年を生きるのに、月30万円の生活費で1億円必要」などの声を耳にします。国税庁の調査によると、平成30年時点の日本の平均収入(給与)は441万円。日々の生活費に子どもの教育費、家や車のローンなどを支払う世代のうちどれだけの人が、数千万円〜1億円もの老後資金を貯められるのでしょうか。
本当にその金額が必要なのか、必要であれば実際に貯められる額なのか、貯めるとするならどのように行えばいいのか解説します。
目次
老後資金に必要な金額
・夫婦世帯の目安
・独身世帯の目安
老後資金に不安を抱いている国民は多い
老後資金に必要な金額
多くの方が不安を抱いている老後資金ですが、実際に老後資金はいくら必要なのでしょうか。夫婦世帯、独身世帯それぞれで解説します。
夫婦世帯の目安
生命保険文化センターの令和元年度「生活保障に関する調査」によると、老後に夫婦2人が生活するために必要だと考えられている最低日常生活費は、平均額で月22.1万円。しかし、これはあくまで最低限の金額です。
ゆとりある暮らしをするために必要と考えられている金額の平均は月14.0万円。ゆとりのある暮らしをするなら、その合算値である36.1万円が必要という計算になります。
なお年金の受給額例は、国民年金※1が月65,141円、厚生年金※2が月220,724円となっています。
※1 満額の老齢基礎年金
※2 平均的な収入43.9万円で40年間就業した場合の、夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額
独身世帯の目安
総務省統計局の家計調査報告によると、高齢単身無職世帯(60歳以上の単身無職世帯)の1カ月あたりの消費支出は平均139,739円でした。それに対する可処分所得は112,649円で、毎月の不足分は27,090円となります。ゆとりある生活を望むならば、夫婦世帯と同様、さらに不足分は増えるでしょう。
夫婦二人でゆとりある人生を送るための月14万円、単身でゆとりある生活を望むためにも3万円以上を確保するためにどうやって資産をつくっていけばいいか。厚生年金の支払いがあったかどうか、厚生年金加入者の遺族年金受給者に該当するかどうかなどで受給額は変わりますが、仮に国民年金だけの支払いであった場合、圧倒的に老後資金が足りないことがわかります。
老後資金に不安を抱いている国民は多い
現在の日本の平均寿命は女性で87.45歳、男性で81.41歳(令和元年簡易生命表)。1960年の平均寿命が女性70.19歳、男性65.32歳だったことを考えると、それぞれ15歳以上も平均寿命を延ばし、驚くほど老後が長くなっていることがわかります。
ちょうどそのころに始まったのが、国民年金です(1961年)。それまで自営業者や農業従事者などを対象とした公的年金はなかったため、全国民が強制的に加入する「国民皆年金」として画期的なものでしたが、平均寿命が延びると共に年金に対する信用が揺らいでいます。
現時点では、現在年金を納めている世代ももちろん年金が受け取れるとされていますが、年々受給年齢が引き上げられており、物価が上がっても年金は上がらないなど、年金制度の破綻が指摘されることも少なくありません。
内閣府が行っている国民生活に関する世論調査(18歳以上)によると、老後の生活設計に悩みや不安を感じている人は56.7%、今後の収入や資産の見通しについて悩みや不安を感じている人は42.1%にのぼります。
また、35.2%の人が、現在の収入や資産についても悩みや不安を感じているという結果になりました。老後はもちろん、目の前の生活にすでに不安を感じているという差し迫った現状がうかがえます。
老後の生活設計と公的年金に関する世論調査では、何歳まで仕事(何歳に退職したい)をしたいか(したか)を問うた際の年齢は、ボリュームゾーンが61歳〜65歳の30.7%。次いで66歳〜70歳が21.5%という結果になりました。
その理由は「定年退職の年齢だから」という方が29.2%、「体力的・精神的に難しいから」という方が29.0%という結果になっています。
「資産が十分にあるから」と答えた方の割合は、たったの0.5%でした。資産が十分ではないと認識しつつも、仕事をし続けられる年齢には限りがあると、多くの人が感じているのです。