3Dプリンターを用いるメリット
既存の製造方法ではなく3Dプリンターを用いるメリット、それはコストとリードタイム(製造期間)を大幅に削減できること。この事実は世界中の誰もが知るところですが、その反面 強度面への不安が残る試みでもあり、実際世界のバイクメーカーにおいても自社内に高精度な業務用3Dプリンターを取り入れていても、試作品どまりで最終部品としての採用には漕ぎ着けられずにいました。
今回の一報は、メーカーが有するワークスチームが最終部品としてレーサーに用いたという世界初とも言える取り組みで、ドゥカティコルセから公式な発表はされていないものの、Roboze とのプロジェクトが確かに存在し、実際に最終部品としてデスモセディチGPに用いられることとなった事実は変わりません。
Roboze とともにこのプロジェクトを立ち上げたドゥカティコルセ デザインマネージャーの Riccardo Savin 氏はその手応えについてこう答えています。
「Roboze の3Dプリンティング技術のおかげで、信じられないほどの空力性能を備えたパーツをスピーディに生産することができるようになった。私たちは Roboze との技術的パートナーシップに非常に満足しており、この素晴らしい結果を踏まえて、これまで以上に彼らの技術の使用を増やすことを計画しています」
市販車へのフィードバックはあるか
デスモセディチGPをはじめ、MotoGPに参戦しているマシンはいずれも市販車ベースとは異なりますが、世界でもっとも過酷なバイクレースを戦うマシンの技術や経験が市販車にフィードバックされるのはこれまでと変わりません。ワークスチームの試みとなれば、より直接的に影響することが想像されます。
一般公道で市販車が担うもの以上の負荷がかかるレースでその強度や耐久性が実証されれば、同じ技術が市販車にも用いられるようになり、生産速度のアップやコスト削減がもたらされれば、それは販売価格が抑えられることにも繋がります。ABS(アンチロック・ブレーキング・システム)など 近年ではバイクの安全性を保つためにさまざまな機器が標準装備されるようになり、価格・重量とも高まる傾向にありますが、この取り組みがバイクという存在をより身近にしてくれる可能性を秘めていると言えるでしょう。
米自動車メーカーのFORD社は、自社製品(自動車)のアクセサリーパーツの3D CADデータを無償配布し、全世界の正規ディーラーや業務用3Dプリンターを用いる企業で製造できる仕組みを発表しました。つまり「このパーツが欲しい。でも在庫がないから注文しなきゃいけない。到着まで1ヶ月かかる」というこれまでの状況が、「3D CADデータがあるんでここで作っちゃいますね」とその場で製造できるようになったのです。ドリンクホルダーなど簡易製品のみが対象ですが、いずれはクルマそのものに使えるパーツ類も現場で製造できる日が来るかもしれません。それも比較的安価に入手できるようになるかも。
公にはなっていない各バイクメーカーやバイクパーツメーカーの3Dプリンター活用の加速化につながることでしょう。最新のバイクへの3Dプリンター活用事例は入手次第お届けしていきます。
提供元・Moto Megane
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