「お客様の声」にも監査が必要な時代へ
企業と消費者の間には、大きな情報の非対称性が存在する。これを是正するためには、第3者による監査が最も効果的だと考える。
「情報の非対称性」とは、企業側は持っている情報を消費者側が知り得ない、という不均衡性を意味する。お客様の声は、極めて大きな情報の非対称性が存在する。今回の件のように「お客様の声」にAI画像を使われれば、それが偽造されたものと見抜くことは容易ではない。筆者からの提案としては、お客様の声にも監査の必要性があるということだ。
本来、監査とは企業会計において作成された財務諸表を、第3者の立場である監査法人がチェックすることを意味する。お客様の声もこれと同じ要領で、第3者によるチェックを入れようという考えだ。お客様の声は企業側が本気で創作にかかれば、消費者はそれを見抜くことができない。そのために第3者の立場で「このお客様の声は創作されたものではない。恣意的に良いものだけを取り上げられていない」と証明するということだ。
筆者はフルーツギフトショップの会社を経営し、英語多読のオンラインスクールを運営している。当たり前だが「お客様の声」を販売ページに掲載している。「いざ第3者から出典元を求められたら、即座に提出可能な実在するものだけ」を取り上げている。企業が倫理観をなくしたら、もはや存在意義がないと考えているためにここは誠実にいかなければいけない。筆者のようにまじめにお客様の声を掲載している企業は、監査サービスがあれば喜んで受けるだろう。
問題はその実現可能性やコストである。「監査など、あまりにもコスト高で非現実的だ」という反論もあるだろう。だが、販売者にとっての「お客様の声」は消費者の購買を決する大きなファクターだ。そのお墨付きを与えられ、消費者の信用を完全に勝ち取ることができるなら、喜んでコストを払う企業は存在すると思っている。利益率の高い商品サービスを取り扱う、美容系の商品や健康食品、自動車メーカーやハウスメーカーはまっさきに参入するのではないだろうか。
今回の件は、「お客様の声」という概念を完全に破壊しかねない恐ろしい事件だと感じる。信用できるお客様の声には、販売者自身が信用を獲得するか、第3者による監査がソリューションの候補になるのではないだろうか。
文・黒坂 岳央/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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