共有名義のマンションを持っている場合、処分・売却はどのようにすればいいのか、悩んでいる方もいるのではないでしょうか。自分が所有している共有持分のみを売却できるのか、全員同意のうえで売却するべきなのか、不動産売買は取引金額が大きいだけに、曖昧な知識のまま売却を進めてしまうと、ほかの共有名義人やマンションを購入した人(以下、「買主」という。)とあとからトラブルになる可能性もあります。そこで今回は、共有名義マンションの持分売却のパターンや注意点などについてお伝えします。
目次
マンションの共有持分だけを売却することはできる?
共有名義のマンション売却のパターンは?
・1. 自分の持分を共有名義人へ売却する
・2. 共有持分を第三者へ売却する
・3. 共有持分を放棄または贈与する
・4. マンション全体を売却する
マンションの共有持分だけを売却することはできる?
2人以上の共有名義でマンションを持っている場合、そもそも共有持分だけを売却できるのでしょうか?
原則として、マンションの共有持分のみを売却することは可能です。例えば、複数人で共同所有しているマンションの場合でも、「自分の所有権持分のみ」を売却できます。また、「自分の持分のみを売る」という場合、ほかの共有名義人の同意は必要なく、残った共有者は各自の持分を、そのまま所有し続けることが可能です。
一般的に、不動産を複数人で共有するのは、以下のようなケースが多いです。
- 親族同士で資金を出し合って購入した
- 夫婦連名(収入合算による連帯債務など)のローンで購入した
- マンションを被相続人の配偶者や子などが複数人で相続した
上記のように共同所有している場合、マンションの売却方法は共有持分のみの売却も含め、いくつかのパターンがあります。
共有名義のマンション売却のパターンは?
共有名義のマンションを売却する場合、売り方としては以下の4つのパターンに分けられます。
1. 自分の持分を共有名義人へ売却する
自分の持分を共有名義人へ売るパターン。この場合、共有名義人はマンションをそのまま所有することができ、自分だけが持分の処分を行えるのが特徴です。また、持分を共有名義人に売却することで、バラバラだったマンションの所有権を単独所有にまとめることができるので、「その後の固定資産(不動産)管理や処分などがしやすくなる」といったメリットがあります。
そのため、共有者がそのマンションに住んでいたり、将来的に利用を考えていたりする場合に向いている方法といえます。
2. 共有持分を第三者へ売却する
2つ目は、自分が持っている共有持分のみを第三者へ売却するパターンです。売却先は、共有持分の買取りを行っている不動産会社や、「購入→転売」によって利益を得られる不動産投資家などが挙げられます。
共有名義人が持分の買取りに合意している場合は、このパターンであれば売却が可能です。ただし、先述した通り自分の持分のみを売る場合、共有名義人の同意がなくても第三者へ売却できますが、実際にはあまり現実的とはいえません。なぜなら、買主(不動産会社や不動産投資家)が買い取ったマンションにはまだ共有名義人が残っているため、買主はせっかく買い取ったマンションのリフォームや転売を自由に行えないからです。
例えば、もし買主がマンションを転売する場合は、共有名義人の同意が必要になりますが、もし共有名義人がそのマンションに居住し続けているのであれば、同意がもらえる可能性は低くなってしまいます。こうしたリスクを避けるために、買取りを行っている不動産会社や投資家などは、もし買い取ったマンションに共有名義人が残っている場合、あらかじめ共有名義人の同意を得て「転売に関する合意書」や「覚書」を作成しておくことが多いです。
3. 共有持分を放棄または贈与する
3つ目は、売却ではなく共有持分を放棄するパターンです。放棄した持分は、その分の所有権が共有名義人へ渡る(帰属する)ことになりますが、それぞれ共有持分の割合に応じて割り振られることになるため、放棄した持分を誰か1人だけに渡すことはできません。放棄でなく贈与の場合は、特定の1人へ持分を渡すことが可能なため、「放棄」と「贈与」にはこうした違いがあります。
参照:民法第255条
放棄または贈与の場合、売却のように利益を得ることはできませんが、何らかの事情で共有状態を解消したいときには、選択肢の一つとして検討してみるとよいでしょう。なお、放棄・贈与によって持分を得た共有者には、贈与税の負担が生じます。
4. マンション全体を売却する
4つ目は、マンション全体を売るパターンです。自分の持分のみを売るのではなく、「共有者全員でマンションそのものを手放す」ということです。
この場合、1人の意思で売却することはできず、民法第251条に基づき、共有名義人全員の同意が必要になります。それ以外は通常のマンション売却と同じ流れのため、同意を得ることさえできれば、比較的スムーズに売却できる方法です。このとき、「共有名義人全員がマンション売却に同意をした」という「合意書」または「覚書」を作成し、共有者全員の署名捺印をとっておけば、売却後のトラブル発生を防ぐことにもつながります。また、こうした合意書類があると買主にとっても購入の安心材料になります。