住宅ローンを組んでマンションを購入する際、基本的には火災保険に加入する流れとなっています。
火災保険は、地震や天災など不測の事態に備えた「万が一」の補償ですが、何らかの理由でマンションを売却する際、解約手続きと返金がスムーズにできるかどうか気になる方もいるのではないでしょうか。また、火災保険に併せて地震保険料を含む諸費用の返金に関しても知っておきたいところです。
今回は、マンション売却時の火災保険や地震保険の対応について紹介します。
目次
マンション売却で火災保険料が戻ってくる
・火災保険料を取り戻せる条件
・火災保険料を取り戻せない事例
・火災保険解約のベストタイミングとは?
・自分で行動することが肝! 火災保険を解約する方法
・計算式で返金額の目安を知っておこう
地震保険はどうなる?
マンション売却で火災保険料が戻ってくる
火災保険は、戸建てと同様に、マンションを購入した場合でも大手損害保険会社を中心に複数の企業が取り扱っています。保険のタイプは、「掛け捨て」と「積み立て」の2つです。
マンションの火災保険は、保険の対象を「建物のみ」「建物と家財どちらも」のいずれにするかをまず決めます。そして契約した補償内容によって各自で負担する金額に違いが生じます。マンションにおける保険補償の対象内容については、以下の通りです。
【マンション内における火災保険補償の対象内容(一例)】
- 火災(落雷やマンション内の建物の共用部分が損害を受けた場合等)
- 風水害(台風による風災や洪水、その他天災などにより共用部分の一部が床上浸水した場合等)
- 水濡れ(給水管の破裂や洗面台の水道蛇口閉め忘れによる水漏れ等)
- 盗難(現金を含む家財の被害が対象)
- 地震保険
マンションを売却する際、売主が気になることのひとつとして、「火災保険の解約及び保険料の返還」が挙げられます。多くの売主は、「前払いをした保険料は取り戻せるの?」という疑問が出てくるのではないでしょうか。あとで「あのときに調べておけばよかった」ということがないよう、保険料返還の条件や解約の流れなどについて知っておきましょう。
火災保険料を取り戻せる条件
マンションの火災保険を「長期一括払い」「年払い」「半年払い」等で契約している場合、保険契約満期日までの残存期間(未経過期間)が1カ月以上であれば保険料は戻ってくるケースがほとんどです。なお、1カ月に満たない日数がある場合や返戻金の計算等、細かい条件については各保険会社によって異なります。マンションを売却しようと考えている方は、改めて火災保険の契約内容を確認しましょう。
火災保険料を取り戻せない事例
一方で火災保険料を取り戻せないのは、すべての契約方式に共通して火災保険の補償期限が1カ月未満という場合が多いです。ほかにも「月払い」契約に関しては、火災保険の残存期間が1カ月以上あっても返戻金がないので注意が必要です。マンションを売却する際に、契約した火災保険の補償期間の残存期間を確認しておきましょう。
火災保険解約のベストタイミングとは?
マンションの売却を理由とした火災保険解約のベストタイミングは、引渡しが完全に終わったあとです。なぜなら、マンションの売買契約成立から引渡しまでの間に火災・地震等の災害に遭遇した場合、売主が修繕費を負担しなくてはならないからです。
※令和2年4月施行の民法改正により、原則として売主が危険負担を負うこととされました。例えば、売買契約締結後、引渡しまでに対象不動産が天災により滅失してしまったとき、買主は代金の支払いを拒むことができます(民法第536条第1項)
もし引渡し完了までに火災保険を解約していた場合は、火災等による建物の毀損・滅失があった場合でも保険の適用が受けられません。そのため、確実に引渡しが完了するまでは火災保険の契約は継続しておいた方が安心です。
なかには、「なるべく早く火災保険料を返金してもらいたい!」と思う方もいるかもしれませんが、保険料を確実に取り戻すためにも焦りは禁物です。
自分で行動することが肝! 火災保険を解約する方法
マンションを売却しても、火災保険が自動的に解約されるわけではなく、そのままではお金も戻ってきません。売主自身が契約した保険会社へ電話またはネットを通じて、解約手続きするのが基本的な流れとなっています。その際に保険証券といった火災保険の契約について記された書類も手元に用意しておくと、解約手続きがスムーズにできます。
その後、保険会社から解約関連の書類が送付されるので、必要事項を記載や捺印の上、提出をします。自分からアクションを起こさない限りスムーズに火災保険料の解約ができないので、注意しましょう。
計算式で返金額の目安を知っておこう
マンションを売却する際、火災保険料の返金額は、「長期一括保険料×未経過料率」の計算式で算出されます。
なお「未経過料率」とは、長期で一括払い契約をした際の契約内容の変更や解約保険料を算出し、契約した内容に基づき変更前後の長期一括払いの保険料の差額をかけた係数のことを指します。ただし、「未経過料率」は保険会社によって異なります。
以下は、保険会社の火災保険解約に基づく返戻金の未経過料率表をピックアップしたものです。ぜひ参考にしてみてください。
【保険会社の火災保険返金関連のページ(抜粋)】
- 損保ジャパン
「火災保険・地震保険 未経過料率表」にて、保険期間、経過年数および月数の軸から「未経過料率」を確認可能。上記で紹介した計算式に長期一括保険料と未経過料率を当てはめると返金額の目安を把握できるでしょう。
地震保険はどうなる?
近年の相次ぐ大規模地震によって地震保険のニーズが高くなっており、火災保険の補償対象として扱われています。一般的に、単独で地震保険に加入することはできません。また、火災保険の補償期間は最長で10年、地震保険の保険期間は最長で5年という相違点があるため、双方の保険料が返金されるかどうか保険会社に問い合わせをしておくとよいです。
マンションの売却による地震保険料の解約に関しても、先に記載した火災保険の解約の流れと同じく、自分で保険会社へ連絡し解約の申請を進めます。