ファミリーレストラン「ロイヤルホスト」や「てんや」を運営する外食チェーン大手のロイヤルホールディングスは、不採算店舗を約70店舗閉店する予定であることを発表した。新型コロナウイルスの影響による需要の急減に対する措置で、飲食業界を含め大きな衝撃が走った。

ロイヤルホストやてんや、休業や時短営業を余儀なくされる

ロイヤルホールディングスは外食事業として、国内で「ロイヤルホスト」を直営217店舗、天丼店の「てんや」を直営147店舗展開している。

コロナの影響を受け、2020年4月にロイヤルホストは6店を休業、14店を土日祝休業とし、そのほかの店舗は営業時間を短縮した。ゴールデンウィーク期間は休業店数を19店舗まで増やし、そのほかの店舗はテイクアウトのみでの営業を決定。

てんやも同様に、4月は休業12店、土日祝休業が2店、そのほかの店舗は時短営業に踏み切った。ゴールデンウィーク中の休業は14店、そのほかの店舗はテイクアウトと宅配のみの営業とし、これによって売上が大きく落ち込んだ。

同社の発表によれば、4月の売上高はロイヤルホストが前年同月の42.1%、てんやが58.1%。これを受け、2020年12月期の売上高の予想を、前回発表の664億円から41.3%減の390億円に下方修正している。最終損益もマイナス155億円と赤字となる見通しだ。

展開している「機内食事業」も売上が大きく減少

ロイヤルホールディングスの苦境は、ロイヤルホストとてんやの売上減によるものだけではない。

同社は機内食事業も展開しており、「関西」部門の4月の売上高は前年同月比2.9%、「福岡」部門で13.2%、「沖縄」部門で53.0%と落ち込んでいる。諸外国の渡航制限や国内の外出自粛で、航空需要が大きく下がったことが理由だ。

非常事態宣言の解除による外食ニーズの回復よりも、航空需要の回復は遅いことが予想される。機内食事業に与える影響は、長期化することになるだろう。

緊急事態への対応策や構造改革案を発表――約70店舗の閉鎖を予定

このような厳しい状況の中、ロイヤルホールディングスは緊急事態への対応策や構造改革案を発表した。緊急事態への対応策としては、「設備投資の再考」「賃料減額」「不採算店舗の閉店」「手元流動性の確保」「役員報酬の減額」など、多岐にわたる。

設備投資については、投資計画の約4割を先送りし、不採算店舗の閉店については「今後も収益の見込めない70店舗程度」としている。手元流動性の確保に関しては、コミットメントラインによる総額100億円の借入枠確保を進めている。

構造改革に向けては、「グループ組織再編」「営業力強化」「成長分野への経営資源投下」「事業再編」「経営効率化」を掲げた。

同社グループの組織体制を再編することで、ガバナンス強化や経営効率の向上などを進めていくという。コロナを機に「選択と集中」を強力に推し進めていくことも発表され、成長が期待される分野として「内食市場」での事業の強化にも努めていくという。

これらの取り組みに向けて「構造改革推進本部」を設置し、最高経営責任者が本部長となり指揮を執っていくという。また、ロイヤルホールディングスは代表取締役の役員報酬を30%減額することも発表しており、まさに骨身を削って取り組んでいく姿勢が見られる。

 

苦しい状況が続くロイヤルホスト

民間調査会社の東京商工リサーチの調べによると、負債1,000万円以上のコロナ倒産は5月22日までに全国で172件起きており、そのうち27件が飲食業関係の企業だ。2019年10月の消費税増税の影響を少なからず受けた飲食業。新型コロナウイルスが、資金ショートの決定打となったケースも少なくない。

大規模な不採算店舗の閉店や構造改革という戦略によって、この苦境を乗り切ろうとしているロイヤルホールディングス。事業環境が悪化している中では、経営者の適切な舵取りが何より求められる。

5月度、6月度の売上高がどう推移していくか、そして中長期的にロイヤルホールディングスの業績はどうなっていくのか、注目したい。

  文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)
 

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