仕事に加え子育てや両親の介護など、現代人はなにかと忙しく、そのライフスタイルは多様化し複雑なものになっている。こうしたなか、保存性が高くレンジで温めてすぐに食べることができる冷凍食品は、その簡便性・利便性から急速にニーズを伸ばしており、コロナ禍で在宅時間が増えたこともこの傾向に拍車をかけている。このニーズに応えるべく、コンビニエンスストア(CVS)大手のセブン–イレブン・ジャパン(東京都/永松文彦社長:以下、セブン‐イレブン)も冷凍食品開発において新たな方向性を描いている。

冷凍食品の売上は60%伸長
今回セブン–イレブンが発表した新商品は9種類。3月15日から全国の店舗で順次発売される。プライベートブランド(PB)の「セブンプレミアム ゴールド」からは、「金の蟹トマトクリーム」「金のボロネーゼ」(いずれも398円:以下、本体価格)のパスタ2種類と「金の4種チーズピッツァ」(498円)、「セブンプレミアム」からは「バターチキンカレー」(348円)、「グリーンカレー」「マッサマンカレー」「キーマ―カレー」(いずれも368円)のカレーソース4種類と冷凍スイーツの「いちごもちっと」(198円)、「マンゴーもちっと」(188円)2種類を展開する。
これらの商品にはセブン–イレブンがこれまでの商品開発を踏まえて取り組む新たな戦略が反映されている。同社は2017年6月から冷凍食品の売場拡充を主な目的として「新レイアウト」の導入を開始し、20年9月からはそのアップデート版として「新レイアウト2020」を展開している。こうした取り組みを経て、18年度から21年度までに冷凍食品分類全体の売上高は60%伸長した。
具材を別々に盛り付けたパスタ
「その一方で21年度は反省点もあった」と商品本部デイリー部FF・冷凍食品シニアマーチャンダイザーの園田康清氏は話す。売場が広がったため、多くの新商品を投入したが、必ずしもヒットするとは限らなかった。また、売場が拡大したとはいえ、狭いCVSの店内で品揃えできる数には限りがある。さらに、他のカテゴリーとのシナジーや冷凍食品ならではの価値創造などにも課題が残る。加えて、独自性の高い商品を開発しても、すぐに他社にマネされてしまうという「同質化」も悩みの種だった。
これまでは弁当や総菜をつくる工場で冷凍食品を製造していたが、22年度には冷凍食品専用の工場が稼働し、安定した商品供給ができる体制が整う。前述の課題や反省点を踏まえ、セブン–イレブンは「原材料」「設備」「レシピ」を軸に長年培ってきた自社の商品開発のノウハウと、冷凍食品業界の凍結技術や効率化設備などの知見を組み合わせ、他社に簡単にマネされない、冷凍食品であることの優位性を生かした独自の商品開発に取り組む。

たとえば、「金の蟹トマトクリーム」では、カニ、トマトソース、クリームソースが別々に盛り付けられている。レンジで温めて食べるときにはじめてそれぞれの具材が混ざり合い、「香りや食感にコントラストが出るようにした」(園田氏)という。