マンション購入時には、住宅ローンを利用するのが一般的です。ただし数千万円の借入れとなる住宅ローンは、例えば35年など長い時間をかけて返済していくので、途中で病気やリストラなど予想外の事態に見舞われるリスクもあります。つまり経済状況が変わり、返済が難しくなる事態も起こり得るということです。

そのような場合、マンションはどうなるのでしょうか。本記事では、マンションの住宅ローンを払えなくなり、売却を検討する前に確認しておきたいことを解説します。

目次
マンションの住宅ローンが払えないとどうなる?
 ・売却と競売はどう違う?
マンションの住宅ローンが払えないときの対処法は?
 ・1. 住宅ローンを組んでいる金融機関に相談する
 ・2. 住宅ローンを借り換える
 ・3. 公的支援を活用する
 ・4. 生活費や資産の見直しを図る

マンションの住宅ローンが払えないとどうなる?

マンションの購入時に住宅ローンを利用する際は、融資を行う金融機関がマンションに抵当権を設定します。抵当権とは、債務(住宅ローン)の担保に設定したもの(マンション)について、ほかの債権者に優先して自己の債権の弁済を受ける権利のことです。抵当権を持つ金融機関は、住宅ローン返済の滞納など「債務不履行」が起きた場合に、マンションを差し押さえることができます(抵当権の実行)。

金融機関が差し押さえたあとは、マンションを競売にかけ、残債の回収にあてるという流れです。つまり、住宅ローンが払えず数カ月にわたって返済が滞ってしまうと、マンションは競売にかけられて、他人の手に渡ることになります。

売却と競売はどう違う?

売却も競売もマンションを明け渡すことに変わりはありません。しかし「売却」は持ち主の意思で行われるのに対し、「競売」は強制的に明け渡すことになります。またマンションの売却価格も、自ら売り出した場合は相場や時にそれ以上の金額で売れることもあります。一方、競売では市場価格より5割~8割以上安くなってしまうこともあります。

そのため競売になると、落札価格を残債にあてても完済できない可能性が高くなります。その場合は、残りの債務を一括で請求されたり、家を手放したあとも返済を続けることになるでしょう。

なおマンションが競売にかけられると「住宅ローンの返済を怠った」として、個人信用情報機関に記録されます。いわゆるブラックリスト入りとなるので、5年ほどはクレジットカードを作ったり、新たにローンを組んだりすることが難しくなります。

マンションの住宅ローンが払えないときの対処法は?

前項のように競売にかけられると大きなリスクがあるため、売却を決断するケースもあると思います。ただしマンションを手放したくない人もいるでしょう。そこでこの章では、マンションを手放すことなく状況を改善するための方法について解説します。

1. 住宅ローンを組んでいる金融機関に相談する

「住宅ローンが払えないから」と滞納を続けると、マンションは競売にかけられてしまいます。手遅れにならないためにも、今月の支払いが難しいと感じた段階で、一度住宅ローンを組んでいる金融機関へ相談に行きましょう。相談することにより、次のような対応をしてもらえる可能性があります。

借入期間を延長してもらう

残りの借入期間を延ばすことで、月々の返済額を減らせます。借入期間が長くなる分、利息が増えて最終的な支払総額は上がりますが、現在の負担が軽くなるので滞納を避けられる可能性があります。

ボーナス払いをなくしてもらう

ボーナス払いのある返済方式の場合、ボーナスが減ったりなくなったりして、返済に困窮するケースも少なくありません。そのようなときは、ボーナス払いをなくしてもらえるか聞いてみましょう。ボーナス払いがなくなると月々の返済額は上がりますが、年2回の大きな支払いがなくなります。住宅ローンの支払いが毎月一定額になるので、家計管理もしやすいでしょう。

返済を一定期間猶予してもらう

特別な事情がある場合は、一定期間返済を猶予してもらえることがあります。条件は金融機関によって異なるため、相談する際に確認してみましょう。相談に行くときは、支払いができない根拠となる書類や診断書などを持参するとスムーズです。

また金融機関には、事前に予約をしておくとよいでしょう。なお、ひと月でも滞納があると相談に乗ってもらえないこともあるため、早めに相談することが大切です。

新型コロナウイルスによる影響

なお新型コロナウイルスの影響で、減収などによりローン返済が難しくなった場合にも、まずは借入先の金融機関に問い合わせましょう。無料で手続きの支援が受けられ、財産の一部を残すこともでき、個人信用情報機関に記録が残らない形で、住宅を手放すことなく住宅ローン以外の債務の免除や減額を申し出ることができる制度があります(2020年12月1日スタート、一定の要件があります)。

参照: 新型コロナウイルス感染症の影響で住宅ローンなどの返済にお困りではありませんか?|金融庁
参照: 新型コロナウイルス感染症の影響による資金繰りやローンの返済等でお困りの皆様へ|金融庁

住宅ローンの返済に消費者ローンを利用しない

住宅ローンが払えないからといって、すぐに競売にかけられるわけではありません。慌てて消費者金融などで借入れを行ってしまうと、ローンが膨らんでより困窮してしまう可能性が高いです。まずは金融機関へ住宅ローンが支払えない旨を伝え、その後どうすればよいかを相談しましょう。

2. 住宅ローンを借り換える

現在の住宅ローンの金利が高い場合は、今より低い金利の住宅ローンに借り換えることで返済額を下げられます。ただし、借り換えには審査を受ける必要があり、手続きにもある程度の時間を要するため、できるだけ早く金融機関へ相談しましょう。日ごろから各金融機関の情報を集め、条件などを比較しておくことをおすすめします。

なお、住宅ローンを借り換える際は、現在の金融機関と新たに借り入れる金融機関それぞれで手数料が発生します。借り換えることで「支払わなくてよくなる金額」と、借り換えることで「発生する支出」をきちんと確認しましょう。

3. 公的支援を活用する

病気などで収入が減った場合は、傷病手当金や障害年金などの公的支援を受けられることがあります。このような公的支援は住宅ローン返済のための支援ではありません。ただ、生活費を節約するなどの方法と併せて活用することで、住宅ローンを払える可能性が高まります。

また、収入が途絶えた場合は、国の自立相談支援事業や生活福祉資金貸付制度など、利用できる制度があるか相談してみるのもよいでしょう。

4. 生活費や資産の見直しを図る

金融機関や公的支援への相談、および住宅ローンの借り換えなど以外に、生活費や資産を見直しましょう。その際、食費や光熱費といった変動費を節約することも大切ですが、固定費や大きな出費を中心に見直すことが大切です。そうすれば住宅ローンを払うための資金を得やすくなります。

例えば、長年見直していない保険内容を適切なものに変えるだけで、ひと月で数千円安くなることもあるでしょう。また、所有している車を売却してカーリースに切り替えれば、売却で一時的にまとまったお金が手に入るうえ、車検代や税金といった大きな出費も抑えられるようになります。