地下構造の把握は、道路や鉄道の建設など、大規模なプロジェクトを順調に進めるのに必要です。
また地球の火山噴火を予測したり、火星の水資源を見つけたりするのにも役立つと言われています。
ところが従来の「重力計」では、微細な重力変化を感知する点で限界があります。
そこでイギリス・バーミンガム大学(University of Birmingham)に所属する物理学者マイケル・ホリンスキー氏ら研究チームは、実用可能な「量子重力センサー」を開発しました。
これは小さな原子の振る舞いから重力の微妙な変化を測定する機器であり、従来の10倍の速度で調査が可能になります。
研究の詳細は、2022年2月23日付の科学誌『Nature』に掲載されました。
目次
超高感度な重力計の限界
課題を克服した「量子重力センサー」が開発される!
超高感度な重力計の限界
地下構造を把握することは、建設、自然災害の予測、天然資源の発見など、さまざまな分野に役立ちます。
では、どのように地下の構造を調査するのでしょうか?
シンプルな方法は「地下を掘って直接確認する」ことかもしれませんが、これには膨大な労力と時間が必要となります。
そもそも地球を穴だらけにするわけにはいきませんよね。
そこで専門家たちは、「地表の重力の違い」に目を付けました。
なぜなら地表の重力の値は、その地下の構造(岩石や岩盤の密度・形状など)によっていくらか異なるからです。
実際、地下に鉱床のような密度の高い物体があると、その物体の引力の影響で、地上の重力値は大きくなります。
逆に地下空洞があると地上の重力値は小さく測定されるのです。
そして現在、重力から地下構造を把握できる「重力計」はさまざまな分野で利用されています。
重力計の精度を高めることができるなら、地球だけでなく火星などの内部を調査するのに役立つかもしれません。
ところが、現在の超高感度な重力計には限界があります。
さまざまな環境要因(特に振動)の影響を受けてしまい、正確な調査を行おうとすると、どうしても時間がかかってしまうのです。
そこで研究チームは、従来の重力計の欠点を克服した、新しい「量子重力センサー」を開発しました。